フェイスブックの夢物語!?リブラコインはビットコインと競合できないか


Mastercardを含める名立たるパートナー企業を巻き込み、フェイスブック主導でプロジェクトが遂行される「リブラコイン」に対して、仮想通貨業界内外から様々な見解が共有されている。


 
 
 
 
融業界で何か大きなことが始まろうとしていること示唆するように、ソーシャルメディア大手が指揮を執るデジタル通貨プロジェクトの全容が昨日ついに明かされた。

一ヵ月のアクティブユーザーがおよそ20億人と推定されているフェイスブックで使用可能になる「リブラコイン」は、スマホ一つで「銀行口座を持たない」人々へ世界経済へ参加するチャンスを与えるという。

世界的な大企業による本格的な仮想通貨業界参入ということもあり、当業界の歴史に新たな1ページを刻むようなリブラコインだが、現時点ではどのような見解が持たれているのだろうか。

仮想通貨の王者「ビットコイン」と競合できるようなデジタル通貨なのだろうか。

 
 
イングランド中央銀行:FBに「厳格な規制」が必要
 
ソーシャルメディアジャイアントが牽引するという、仮想通貨業界でもかつてない程のスケールで展開されるリブラプロジェクトに対して、中央銀行や政府関係者の間では様々な見解が述べられているようだ。

例えば、ホワイトペーパー公開直後の報道で、フランス財務相ブルーノ・ル・メアール氏は、リブラコインが「ソブリンな(国家から独立した)通貨になってはいけない」と警笛を鳴らした。

また、イングランド中央銀行総裁マーク・カーネイ氏は、ポルトガルで開催された中央銀行の会議で、新決済システムへのサインアップにおいて、フェイスブックは厳格な規制に準拠する必要があると発言。

さらに、FTの報道によると、カーネイ氏はフェイスブックを「G7諸国、国際決済銀行、国際通貨基金および金融安定委員会」と協力して監視する意向を示しているという。

一方、事前にリブラコインに関する情報を共有されていたと語る米国連邦準備理事長ジェローム・パウエル氏は、同コインのリスクを認識しているものも、潜在的な利益があるとコメントした。

しかし、初期段階にある仮想通貨およびデジタル通貨は、現段階で中央銀行の金融政策に影響しないという。
 

潜在的な利益はあるが、大規模なアプリケーションを持つことが可能な通貨には潜在的なリスクもあるだろう。

 
尚、現時点の米国政府の動きとしては、米国上院委員会が来月16日にリブラプロジェクトの「デジタル通貨とプライバシー保護の懸念」に関する公聴会を開くことを公式ページで発表している。
 
 
リブラ規制はどのように進められる?
 
世界の金融政策を牽引する通貨の番人のコメントにもあったように、現時点では「規制」と「プライバシー保護」が各国の規制当局の懸念だと言えるだろう。

それでも、フェイスブックという単一企業に焦点が当てられた前述に挙げられた発言には、フェイスブックが排他的にリブラブロックチェーンを管理しているという「誤った前提」があるのかもしれない。
 

☞リブラの全容についてはこちらから!

 
リブラを構想し、またリブラコインのウォレットサービスを提供する「Calibra (カリブラ)」のディレクターであるデイビッド・マーカス氏は、同プロジェクトにおける規制面の懸念について、次のように述べている。
 

2つの層があることを理解しなければならない…スイスを拠点とする非営利団体であるリブラ連盟は消費者と関わらない。そのため、規制当局とやり取りをするのは主に資産管理を行うウォレットサービスやエコシステムに参加する規制された組織だ…準備金の透明性、説明責任、マネジメントに関する会話はこのデジタル通貨には重要だと思う。(これに関する)規制当局との会話は歓迎している…

 
また、法定通貨からリブラコインの交換において主な入口となるカリブラウォレットは、KYC・AMLを厳守するだけでなく、(例外はあると明示しながらも)「ソーシャルメディアプロファイルと金融データ」を紐付けないという。
 

☞リブラやカリブラについてはこちら!

 
 
リブラコインへの期待と将来性
 


 

規制やプライバシー保護に関する懸念が現時点では完全に拭いきれてないものの、リブラのパートナー企業はソーシャルメディア大手主導のデジタル通貨の取り組みに大きな期待を抱いているようだ。

Statisticaが提供した2019年4月時点の統計によると、一ヵ月に20億人以上のアクティブユーザーを誇るフェイスブックは、「最もユーザー数の多いソーシャルネットワークアプリ」ランキングの1位(フェイスブック)、3位(WhatsApp)、4位(フェイスブック・メッセンジャー)、5位(Instagram)のアプリを保有している。

そんなフェイスブックが指揮を執るリブラプロジェクトは、グローバル規模の「金融包摂」を促進するとボーダフォングループの製品&サービスグループディレクターであるステファーノ・パリセ氏は述べた。
 

デジタル社会では、住んでいる場所やどれくらいの資産を持っているかに関係なく、人々は金融サービスにアクセスできるべきだ…(リブラは)真に変革的になる可能性を秘めており、世界中の金融サービスを利用したことがないまたはアクセスに苦労している人々に利益をもたらすだろう。

 
同様に、Mastercardを含める著名企業から後ろ盾されるリブラについて、パートナー企業に名乗りを挙げているUberの支払い&リスク担当責任者のピーター・ヘイゼルハースト氏は次のようにコメントした。

 

リブラは従来の金融ネットワークとデジタル通貨技術とのギャップを埋める可能性を秘めており、全ての人々、特に消費者のコストを削減する。

 
ヘイゼルハースト氏が指摘するように、国際送金において「特に消費者のコスト」を削減する可能性があるリブラだが、Uberのようなクレジットカードによるコストが多い企業にとっても大幅なコストカットが予想される。

それというのも、ユーザーとサービス提供者がデジタル通貨で(現金の手渡しのように)直接的なやりとりを行う場合、クレジット決済のような摩擦の多いインフラを迂回することが可能だ。

特に、(2018年時点で)87%のプラットフォーム上の決済がクレジット・デビットカードで行われるUberのような企業は、カード決済が行われる度に発生する「Interchange fee (売上交換手数料)」を大幅に削減できるかもしれない。
 
 
ビットコイン Vs. 大企業コイン
 

 
大企業主導&限られた企業しかネットワークに参加できないリブラブロックチェーンに対して、仮想通貨業界からは愛悪のあるコメントが多い。

カリブラウォレットが仮想通貨エコシステムへより多くのユーザーを呼び込むや、リブラコインと送金に特化したアルトコインの競合などが話題となっている中、特に注目すべきトピックとしては、「BTC対リブラ」、「法定通貨による価値の担保」、「脱ドル化」などが挙げられる。
 
 
・ビットコイン Vs. リブラコイン
 
「安価な送金手段」に焦点を当てる大企業主導のリブラコインが、検閲耐性や非中央集権化などを掲げるインターネット上のみで存在する「価値の保存手段」であるBTCと直接的に競合しない(または不可能)と言えるだろう。

これについては、リブラコインを手掛けた張本人であるデイビッド・マーカス氏の言葉からも伺える。
 

多くの人がリブラコインとビットコインを戦わせたいようだが、 私の考えではこれらは同じカテゴリーにない。 BTCが相関性のない投資用の資産である一方、 リブラコインは安定した価値の交換媒体として設計されている。私はこれまで、そしてこれからもBTCファンだが、異なる目的のためだ。

 
 
・リブラコインは中央集権化されている

ネットワークの構造だけでなく、政治的およびガバナンス面における非中央集権化や分散化を強く意識する仮想通貨業界のキープレイヤーは、リブラコインが分散化されているとは見なしていない。

参加企業が限られている他にも様々な理由が挙げられており、例えば同コインが従来の金融政策の直接的な影響を受ける法定通貨(および国債)によって担保されているため(BTCとは異なり)「apolitical (政治的に無関心)」でないどころか、準備金の管理者がネットワークにおける絶大な影響力を持つことが指摘されている。

これについて、仮想通貨「XRP」を使った金融機関同士の新たな国際送金インフラを提供するリップル社のCTOデイビッド・シュワーツ氏は、次のようにコメントした。
 

トークン価値が担保されているシステムが分散化できるとは思わない。(準備金の)管理者は、どちらのフォークに経済的価値があるかを選択できるようになるため、システムにおける全てのルールを選択できる。

 
 
・法定通貨への依存

従来の金融システムの原動力となっている法定通貨の問題をビットコインやその他の仮想通貨がを解決しようとする中、法定通貨で価値が「担保」されているリブラコインは、仮想通貨の主旨を外しているという見解もあるようだ。

かねてよりビットコインに賛成的な見解を示していることで知られるコロンビア大学経済学者サイフェディアン・アモウス氏は、このことについて次のように述べた。
 

政府が許可すれば、リブラはほとんどのKYC / AMLの法定通貨プロセッサーと通貨を殺し、米ドルに基づく世界規模のデジタル決済システムを生み出す。しかし、あらゆる政治的な通貨システムが抱える同じ問題と直面し、BTCが唯一の有効な解決策だろう。

 

☞法定通貨の問題について詳しくはこちら!
 
 

・リブラコインによる「脱ドル化」の促進

それでも、従来の金融システムで銀行口座へのアクセスを持たない人々が、スマホ一つで世界経済に参加できることは前向きな発展だと見ている業界人は多い。

また、複数の法定通貨で価値が担保されているリブラコインは、世界経済における米ドルの優位性を制するような、グローバル規模で使用される通貨になる可能性を示唆する業界人もいる。

例えば、「法定通貨はスキャムだ」と主張するシェイプシフトCEOのエリック・ボアヒーズ氏は、米ドルに対するリブラコインの有用性について言及した。
 


リブラは米ドルだけで価値を裏打ちしないという素晴らしい決断をした。これは深い意味を持つ。中期的に、政府が発行する単一の通貨を代替する可能性がある。おそらく間違いなく米ドルより優れていると言えるだろう。

 
 
・あくまでも「仮想通貨」とは言えない

リブラコインに対する最も多い批判は、そもそも同コインを一般的な仮想通貨と見なせないことが挙げられる。

これは、法定通貨で価値が担保されている「ステーブルコイン」によく見られる批判であり、中央集権化された従来の金融機関や大企業への依存を必要とするリブラコインにも当てはまると言えるだろう。

リブラコインが仮想通貨に分類できない理由に関して、ビットコイン教育者として知られているアンドリアス・アントノポラス氏は次のように述べている。
 

仮想通貨はオープンで、パブリックな、中立的で、国境がなく、また検閲耐性を持つ。これらは分散化されたコントロールの先天的な特徴だ。中央集権型の組織によって発行され、特定管轄下の法律に準拠するものはこの5つの柱を達成できない。

 

☞詳しくはこちらの記事を!

 
 
このように、新たな送金手段としてや、金融包摂を促進するという面においては期待されているリブラコインだが、BTCの対となるような存在である同コインを仮想通貨と見なせるかどうかはわからない。

また、リブラプロジェクトをリードするマーカス氏を含める様々な業界人が指摘するように、金融政策の影響を受ける法定通貨を使用し、また政府からの圧力を受ける大企業が手掛けるコインはBTCと競合できないかもしれない。

それでも、各国の法定通貨と競合するような大企業による民間通貨の登場は、従来の金融業界の風向きが変わっていることを如実に示していると言えるだろう。
 

☞シティバンク銀行マックローリン氏、クリプト化された「未来のお金」を語る
 

民間通貨が普及するにつれて、クレジットカード、送金サービス、および商業銀行を始めとする様々な分野の変革が予想されている中、今後どのように金融業界が変化するのだろうか。
 
 


 
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