Blockstream創設者が語る「デジタルゴールドが生まれたきっかけについて」

ビットコイン開発を手掛けるBlockstreamの創設者であるAdam Back (アダム・バック)氏に仮想通貨ニュース.comが独占インタビュー!
 
 
経済学者の間でも賛否両論あるものの、政治・経済が不安定な国々で実際に利用され始めている、ビットコイン。

最近では「デジタルゴールド」という価値の保存手段として定着してきたビットコインだが、例えば送金手数料や時間においてそれよりも優れている他の仮想通貨と競合できるのだろうか。

ビットコインの第二層技術と言われている「ライトニングネットワーク」や「リキッド」の開発を手掛けるBlockstream創設者であるバック氏によると、「セキュリティ」と「信頼性」がビットコインと他決済システムと大きな違いであり、また強みだという。

ビットコインホワイトペーパーでも名前が挙げられている程ビットコインの構想をインスパイアするような技術を生み出した、バック氏。

出典:Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System – Bitcoin.org

「社会的な変革は人々が新たな技術を採用することから始まる」という思想を持つサイファーパンクであるバック氏は、サトシ・ナカモトもメンバーに入っていたメールリストに入っていた人物でもある。

そんなバック氏が語ってくれた、「デジタルゴールド」が誕生したきっかけ。

また、ビットコインが解決した歴史的な難題と、これから解決しなければならない拡張性問題の解決策の一つとなる「ライトニングネットワーク」の将来性。

そして、次世代の金融インフラには相応しい頑強なセキュリティと信頼性を築いているビットコインのこれからについて、ありのままお届けする。

 
 

ーアダムさんのこれまでのキャリアを教えてください!

私は大学と大学院でコンピューターサイエンスを学び、博士号では「分散型コンピューティング」に関する研究を行いました。

その後、コンサルタントや技術エキスパートとして新興企業や大企業を手伝ってきたんですが、これまでのキャリアは暗号学を様々なものへ適用するもの多かったです。

例えば、暗号学を使うプロトコールや、ストレージにおけるネットワークセキュリティ、またビットコインが始まるもっと前の電子通貨などに関するプロジェクトなど。

暗号学は大学で学んだというよりも趣味みたいなものだったんですが、私のキャリアは結果的に暗号学に関するものがメインになりました。

そもそも暗号学に興味を持つようになったきっかけは「PGP(Pretty Good Privacy, とてもいいプライバシー)」の誕生です。

昔よく話していた教え子がいたんですが、この生徒は分散型システムでRSAを高速化させる研究をしていました。

(*RSAとは、70年代に考案された公開鍵を使用する暗号法のこと。)

その後、RSAを採用している「PGP」が誕生し、その時に私は技術的な関心からそれを読んだのを覚えています。

PGPの技術仕様や「地政学的な利益」を生み出していたことなどが私にとってはとても興味深かったです。

特に、ユーザーへプライバシーや「self-determination (自主的決定権)」を与えるところに惹かれました。

仮想通貨においても「分散型」や「暗号法」のような分野に興味があります。

 

ー仮想通貨には欠かせないような「暗号学」や「分散型技術」に以前から関心があったんですね。

「PGP」について読んだり、インターネットのリソースから学んだりするのは、私が関心のあるトピックを繋ぐような「ネクサス(鎖)」みたいでしたね。

また、私は技術に興味があると言いましたが、技術者にも2種類いると思いますよ。

まず、数学や学術的な方面から技術に興味がある人。

学術論文を出版するためには、何か新しいアイデアを提供する必要がありますが、実用性やユーザーにとって安全である必要はないです。

一方、実際に技術を使ってユーザーのために何かを作ることに注力する人もいます。

私はこちらのグループです。

もちろん学術論文を沢山読みますが、それを読む理由は何か実際に使えるようなものを見つけるため。

新システムの構築には、既存システムで実際に利用されている基礎的な構成要素を使う必要があり、効率性、メモリスペース、CPUタイムなどに関する設計上のトレードオフ(代償)を考える必要があります。

 

ーアダムさんはこれまでたくさんのプロジェクトを経験していますが、どれが最も心に残っていますか?

ユーザーが使用するEメールのプライバシー(匿名性)を向上させる「remailer(リメーラー)」を運営していたことがあったのですが、それがきっかけでHashCash (ハッシュ・キャッシュ)を発明することになりました。

出典:Hashcash- A Denial ofServiceCounter-Measure

なぜこれを作ったかというと、リメーラーを通じて一部の人々がスパムを送っていたという問題があったからです。

一般的なスパム対策において、リメーラーを管理するシステム管理者がスパムメールやそれが送信されてくるIPアドレスをブロックすることで対処します。

しかし、匿名機能が搭載されたリメーラーではこのようなことを行えません。

なぜなら、誰が送信してきたかを特定できないから。

そのため、私は通常とは全く違う考え方をしなければなりませんでした。

この問題の本質が何かを考えた時に気付いたことが、Eメールを送信するのにコストが全くかからないということ。

そのため、送信時にコストを負担させられる方法がないかな、と思いました。

ちなみにですが、ユーザーにコストを負担させるのは、「料金を請求する」よりも難しくはないです。

例えば、この問題の解決策となった「HashCash」の場合、Eメール送信者へのコストはCPUサイクル。

Hashcashでは、メール送信者がCPUを使用してスタンプを生成します。

一度送ったスタンプは、二度と使用できません。

一回使ったら、それっきり。

また、受信者はそれが事実であることを証明・確認します。

これでスパムの問題を解決できますよね。

(*スパム業者は大量にメールを送信するビジネスモデルを築いているため、一見のメールに対して少量のCPUコストでも利益を生み出せなくなる。)

また、この技術がデジタルゴールが生まれる前のアイデアや議論を生み出しました。

というのも、このHashCashをサイファーパンクのメールリストで共有したのですが、スタンプを二回使用する方法を模索したり、分散型システムでインフレーションを制御する方法を議論するなど、興味深い観察をしていました。

「HashCashがリリースされた1997年から、複数の人々が直ぐにデジタルゴールドに関連付け、実現可能な電子通貨を実現するためのPoWの使用に惹かれた。」

 

ーサイファーパンクはどんな人たちだったんですか?

サイファーパンクは、テクノロジーを使用して社会をポジティブに変革させることに興味がある人たちです。

哲学的には「社会的な変革は人々が新たな技術を採用することから始まる」という思想を持っていました。

出典:Bitcoin Wiki

「印刷機」や「インターネット」などのテクノロジーよって社会が変化したことを踏まえると、頑張ってロビーを行って政治家から許可をもらうよりも新技術によって社会が前進することの方が多いです。

そのため、サイファーパンク内では「Cypherpunks write code. (サイファーパンクはコードを書く)」という言葉がありました。

出典:A Cypherpunk’s Manifesto

これは、「実際に書いたコードが広く受け入れられれば、プライバシーに対する一般的な考え方をを変えられるのではないか」という考え。

私もこのようなビジョンに惹かれてサイファーパンクのEメールリストに居残り続けました。


ーサイファーパンクのEメールリストと言えば、ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトもリストの中にいたようですが、サトシはどんな感じの人でしたか?

Eメールでやり取りしただけなので、正直なところそこまで知りません…。

ホワイトペーパーが公開される2009年の1月の前となる2008年8月にメールしてきたんですが、その時は「サトシ・ナカモト」という名前が偽名だとは思ってもいませんでした。

なぜなら、論文やソースコードを公開する場合や学術的な質問をしてきましたし。

私は、いくつかのリソースや「B-Money」の論文を見るように薦めました。

 

ービットコインホワイトペーパーを最初に手にした時は何を思いましたか?

「興味深いな」と思いましたね。

なぜなら、サトシはある特定の問題を解決していたから。

人々はビットコインのようなシステムを1997-1998年くらいから作ろうとしていましたが、いつも幾つかの課題に直面していました。

例えば、B-MoneyBitGoldなど。

出典:サトシ・ナカモトのBitcointalkへの投稿

「ビットコインは、1998年のサイファーパンクに関するWei Dai氏のb-money案とNick SzaboのBitgold案の実装だ。」

これらを実装するには様々な問題があったのですが、一番の課題は「どうインフレを制御するか」ということ。

多くの人がHashCashを利用してコインを生成することを考えていましたが、皆がコインを作れた場合、通貨供給量が上昇し、もの凄いインフレが起こるのではないか、という懸念が…。

分散型システムを使用した上でインフレ問題をどのように対処するかが考えられていましたが、誰も思いつきませんでした。

そんな中でビットコインはこの問題を解決し、様々な概念をエレガントな方法で組み合わせていました。

出典:サトシ・ナカモトのP2P Foundationへの投稿

「(ビットコインは)貴金属のようだ。(中央銀行のように)価値を一定に保つために供給量を変更する代わりに、(ビットコインでは)供給量が事前に決定され、価値が変わる。ユーザー数が増えるにつれて、コインあたりの価値が上がる。そのため、正帰還のループになる可能性がある。ユーザーが増えるにつれて価値が上昇する。この高まる価値がより多くのユーザーを惹きつけるのに利用できるかもしれない。」

 

ービットコイン開発において、何か新たな発見はありましたか?

私が意欲的に開発に携わり始めた時に気が付いたことは、一つの問題を解決するためにビットコインが大きなトレードオフをしていたということ。

先代の通貨システムは、ビットコインとは異なるトレードオフを選んでいました。

例えば、過去のものは素晴らしい匿名性を持っていましたが、中央集権型。

これとは対照的に、ビットコインは分散型システムを実現しましたが、プライバシーは良くない。

そのため、ビットコインを見てまず思ったのは「分散化に関する問題を解決したのは重要」だということ。

というのも、B MoneyやBit Goldも分散化を実現する必要性を認識していたものの、実際に解決策を提供できたのはビットコインでした。

そもそも中央集権化に関する問題が指摘され始めるようになったのは、90年代中頃に登場したDigiCashです。

これはDavid Chaum氏によって作られたとてもいいプライバシーシステムを持つ決済プロトコールでしたが、二重払いの問題を解決するために、取引を中央集権型サーバーで処理していました。

すなわち、中央集権型のサーバーが倒れると、お金が使われたかどうかがわからなくなってしまいます。

出典:サトシ・ナカモトのP2P Foundationへの投稿

「(Open coinは)Chaum氏による古いものについて話しているが、中央集権型のミンティングが唯一の利用可能なものだったからかもしれない。 多分彼らは新しい方向に進むことに興味があるだろう。1990年代以降すべての企業が電子通貨に失敗したこともあり、多くの人が自動的にそれを見込みがないものだと思っている。しかし、(企業を)破滅させたのは中央集権化されたシステムの性質であることが(みんなにとって)明らかであることを私は望む。分散型の非信頼ベースのシステムを試すのは、今回が初めてだと思う。」

これがDigiCashの終わりだったんですが、1997年以降にプライバシーや電子通貨に興味があったサイファーパンクたちが再びこのプロジェクトに注目し始めました。

なぜなら、個人情報を守れるオンライン決済がなければ、完全なプライバシーはあるとは言い難い。

クレジットカードでは身元が分かってしまいます。

「匿名」で良いはずのオンライン上なのに、決済においては匿名ではない。

そのため、プライバシーが保護される匿名の電子通貨にとても興味があったんですが、すぐに人々が気付き始めたのが「システムが分散化されていなければならない」ということです。

そうでなければ、失敗、または「central-point-of-failure (単一障害点)」を生み出す大きなリスクへ繋がります。

 

ーアダムさんはどのような形でビットコイン開発に携わってきたのですか?

私はビットコインのプライバシーを改善する方法を考えていたので、Confidential Transaction(匿名取引)を始めとする他多数のアイデアを提供しました。

Confidential Transactionはビットコインのサイドチェーン(第二層技術)である「Liquid (リキッド)」や「Elements (エレメンツ)」で実際に実装されます。

また、最近では匿名機能をビットコインに付け足すべきなのではないか、なんて意見もありますよね。

 

ー匿名機能がビットコインに実装されるにはまた「ハッシュ戦争」みたいのが起こるような…

もちろん数年間に及ぶ最適化やトレードオフに関する議論が必要でしょうね。

ビットコインに匿名機能を付けることに興味がある人は常にビットコインを最適化し、将来的にはもしかするとそれを実現できるようになるかもしれません。

しかし、ビットコインにはコンセンサスメカニズムがあるため一部の人がやりたいからと言って何かが実現するわけではなく、ユーザーや投資家が何かの変更に対して容認する必要があります。

 

ーアダムさんはよく「トレードオフ」について話しますが、ビットコインの「セキュリティ」に関してはどのようなことが言えるでしょうか。

「セキュリティ」と「スケール (拡張性)」が一つのトレードオフです。

これには幾つかの論点が挙げられますね。

もしセキュリティを弱め過ぎると、ビットコインは他の決済システムと競合できなくなります。

仮想通貨業界で多くの関心を集めているこのトレードオフですが、その理由はビットコインの価値に対して異なる見解があるからだと思います。

一部の人とって、ビットコインは商用利用可能な、安価に使える「決済システム」

他の人にとっては、プライバシーが尊重され、検閲がない「価値の保存手段」。

それぞれのユースケースのために構築するネットワークの必要要素は異なります。

もし大きなトレードオフをオンチェーン(*ネットワークの主体となるブロックチェーン)で行う場合、取引を承認するのにかかるコストがより高価になり、個人ユーザーやビジネスが減ります。

ビットコインにおいて、完全なセキュリティを持つということは「自分のノードを持つ」ということ。

ノードを持つためのコスト負担が大きくなり過ぎると、一般ユーザーがノードを持てなくなります。

他のコインではこれが理由でほとんどノードがないこともありますよね。

結果的に、中央集権型のノードのようなものとなり、企業によるノードが多いイーサリアムみたいになります。

企業がネットワークに方針を押し付けることができるようになると、それはもうビットコインではないでしょう。

また、このトレードオフに一定のバランスが崩れるとプロトコールとしてベストだとは言い難い。

トレードオフを踏まえた上で、「何が効率のいいプロトコールか」を見定める必要があります。

 

ー実際にどんなプロトコールが「効率が良い」と言えるんですか?

私は「ライトニングネットワーク」が効率のいいものだと思います。

出典:Blockstream公式ページ

ライトニングネットワークはセキュリティを変えます。

資金はホット(オンライン)で管理される必要があり、また閉じられたチャネルを確認するためにもネットワークを監視する必要があります。

しかし、このトレードオフをすることで、低帯域幅のネットワークでも高い拡張性を得ることが出来ます。

(*一般的に帯域幅が広い=通信速度が速い)

ネットワークプロトコールに経験のある人の多くにとって、このようなトレードオフは現実的であり、可能性がある拡張性を確保する方法だと言えるでしょう。

なぜなら、回線容量の使用量が少なく、取引をしている人とそれをラウティングしている人しか取引を見れません。

また、ライトニングネットワーク上で沢山の取引がされても、実際にメインブロックチェーンで記録されるのはほんの少し。

そのため、ビットコインブロックチェーンの拡張性問題に大きく貢献できます。

 

ーライトニングネットワークの「信頼」におけるトレードオフはあるのでしょうか。

ライトニングネットワークはビットコインが築いている「信頼」と「セキュリティ」モデルに近いですが、やはりトレードオフはあります。

例えば、一つの新しいセキュリティリスクはウォレットがオンラインのため、誰かがネットワーク上の装置に悪さをすることができれば資金が取られてしまう可能性があります。

また、ライトニングネットワークではあなたと取引相手の間にチャネルを作る必要があり、相手が信頼できないと、例えばチャネルを閉めることによって資金を使う前の状態へ戻されるかもしれません。

例えば、あなたが誰かとチャネルを開き、相手があなたに送金するとします。

この時、相手がチャネルを閉めることでお金を送る前の状態に見せかける、というリスクがライトニングネットワークには生まれます。

このようなことが行われないように、ネットワークを監視する必要で、ユーザーはチャネルの監視を「Watchtower (ウォッチタワー)」へ委託することができます。

(*ウォッチタワーとは、ライトニングネットワークの状態を監視する常にオンラインなノードのこと。)

しかし、このような方法でも依然として受動的な処置しか行うことが出来ず、もしウォッチタワーがちゃんと監視できなければ問題が発生します。

このようなネットワーク監視と送信者・受信者のどちらもがオンラインであることを踏まえた上でも、ライトニングネットワークは「小口決済」に向いています。

それでも、送金時間にも1秒もかからないという大きな利点があり、これはビットコインのメインチェーンにおける10分とは大きな違いです。

 

ーライトニングネットワークは「いつになったらできる」のかや「時間がかかり過ぎている」なんて声もありますが、これらのコメントについてどう思われますか?

実装するのを助けてくれよ、と思います(笑)

私の考えは、「サイファーパンクの思想」と同じです。

もし何か問題を見つけたらその問題を解決しろというもので、変化を作り出すために実際にコードを書き、ソフトウェアを実装するだけ。

単に問題を見つけて不満を言っているようでは何も変わりませんよね。

もしあなたがよいトレードオフを思いつき、ビジョンがあるなら、自分で作ればいいということです。

自由市場で競争するのは当たり前です。

トレードオフに関する議論はどのユースケースが「ユーザー」にとって重要であるかということに関係しています。

個人的には、例えばより大きなブロックサイズを選ぶという選択はあまり合理的だとは言えません。

なぜならデータストーレージだけを考えても新たなテラバイトのドライブを数日おきに購入する必要があります。

また、企業が使用するような高価なインターネットコネクションを必要とします。

そのため、P2P(ピア―・ツー・ピー)というか、どちらかと言えばCompany2Company(企業・ツー・企業)みたいな感じになります。

このようのトレードオフは行き過ぎだと思います。

ライトニングネットワークではこのような問題に直面することなく拡張性の問題を解決することが可能である効率的なプロトコールです。

また、TCP/IPやインターネットプロトコールに慣れている技術者や経験者にとって、プロトコール上に幾つかの層があるのは自然なこと。

そもそもアプリによって最適なプロトコールは異なるものです。

ストリーミング、ウェブトラフィック、メールトラフィック、ファイルシェアリングなど様々なウェブアプリがありますが、それぞれの仕様に最適化されたプロトコールが使われています。

ビットコインも似たようなもの。

一つの層で速い決済、少額決済、大きな決済など全てに対して最適化させようとすると、全てがダメになります。

「選択できる異なるトレードオフを持つより多く層ができるのがおそらく未来だ…安全な資産の自己管理と検閲耐性のトレードオフは、速いマイクロ決済とは異なるため、1つのサイズの単層に全てを収めるようにするのは困難。そしてトレーダーが好む機能のバランスとはまた違ったもの。」

もしTCP/IPのような「信頼できる安全なプロトコール」が第一層にあれば、その上に他のユースケースに最適化されたものを構築することができます。

信頼できる第一層の目的は、長期的なストーレージ、取引、検閲耐性、ミディアムサイズ以上(マイクロペイメント以外)の国際決済、また第二層との連携。

第二層は、第一層で行われる取引が頻繁に行われないようにするというものです。

もう既に三-四層がビットコインではありますよね。

ライトニング、取引所によって使われるサイドチェーン「リキッド」、またスマートコントラクトを扱うサイドチェーン「Rootstock」など。


「RSKは、サイドチェーンでイーサリアムスマートコントラクトを使用している。頑丈性/安全性 vs jscriptのようなトレードオフだ。」

もし誰かが中央集権型の一般的な取引を念頭に置いた上でトレードオフを考える場合、そのようなためのサイドチェーンを作ることができます。

そして他の人々もそれを選んで使うことができます。

もし企業を信頼しなければならないものを作るのなら、サイドチェーンを作ることでそれを可能にできます。

これによって、ビットコインの頑強なセキュリティを築く第一層に影響を与えずに済みます。

私はこのような議論を沢山の人々としてきました。

その時に私が感じたことは、一部の人は技術者ではないということ。

もし彼らがこんなのがあったらいいと思っても、開発者がいないのでそれを構築できません。

また、ビットコインの議論の根底には「人々が何を欲しいか」というものがあるでしょう。

というのも、誰もが使えるような性質を持ったビットコインが欲しい、ということにはみんなが賛同します。

でもどうやったらそれをできるだけ早く効率的にやるかということ。

また、セキュリティを保ちながらそれを行うということ。

なぜなら、セキュリティが失われ過ぎると、検閲耐性がなくなり、中央集権型となり、それによってビットコインの価値がなくなります。

トレードオフをしっかりと考えなければなりません。

 

ー様々なトレードオフを考慮した上で、ビットコインがベストな仮想通貨だといえますか?

そう思いますよ。

ビットコインは「セキュリティ」と「信頼性」に焦点を当てており、経験のある優秀な開発者が集まっています。

テクニカルに興味深い実験をしているようなコインもありますが、基本的に「実験的」なことをやっておりリスクが高いものばかり。

これはあくまでも新技術であり、どのようなものが安全かはわかりません。

しかし、ビットコインは新たな機能を常に取り入れたり、イノベーションのスピードも速いです。

そのため、私の見解では安全で信頼できまた効率性の良い技術は、サイドチェーンのような二層での実装になるかもしれませんが、ビットコインでも取り入れられる様になるでしょう。

 

ー「ビットコインではなくブロックチェーン」という特にウォールストリートで多いビットコインの観察についてアダムさんはどう思いますか?

これは興味深い議論ですよね。

人々がそのようなことを言う一つの理由は、一部の人はそもそもビットコインのユースケースにそこまで興味がないことが挙げられるでしょう。

「検閲耐性」を持っているや、グローバル通貨となることなど。

証券会社や金融系の企業はユーザーにビットコインをデジタルゴールドとして販売するかもしれませんが、彼らは他のアプリケーションも考えているのかもしれません。

この時考えなければいけないのが、「ブロックチェーンにコインがなかったら安全か」という質問。

コインがないものはあるものよりも安全だとは言えません。

ネットワークのセキュリティを保つビットコインのゲーム理論は、マイナーに取引処理を正しく行うための経済的な動機を与えています。

仮想通貨が存在しないブロックチェーンを作っても、取引処理を行う「動機」がないため、仮想通貨があるものよりも安全なものは作れないでしょう。

また、どのようなアプリにブロックチェーン技術を使うべきか、という議論もありますよね。

これは多くの混乱を巻き起こしています。

私は、ブロックチェーン技術は取引関連のものに使われるのがベストだと思います。

例えばビットコインを送金したり、株式、債券、金証券など、価値の移転を少量のデータでできるもの。

他の人はブロックチェーンを見て、何か新しいアプリケーションを想像しようとし、マルチメディアメッセージなどを考えたりしていましたが、これらは実はあまり合理的ではない。

というのも、ブロックチェーンには情報をブロードキャストするための帯域幅の制限があったり、ストーレージをするための用途としてはとても高価。

また、数万以上のノードが受信可能にするためにも、データ容量を最適化し、取引が小さくある必要性があります。

ビットコインの「セキュリティ」と「信頼」にとって、取引履歴を検証できるように多くのユーザーがデータを受信できることは重要。

「Don’t trust, verify! (信頼しないで、承認しろ!)」という言葉が当業界でありますよね。

そのため、取引のフォーマットをできるだけ小さくするように最適化する必要があります。

これにおいて、「ライトニングネットワーク」や「リキッド」のようなオプトイン(選択可能な)サイドチェーンのようなブロードキャストしない第二層プロトコールもメインチェーンの帯域幅の使用を減らすのに役立ちます。

出典:Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System – Bitcoin.org

「ノードが妥当でない取引を支払いとして受け取ることはなく、正直なノードがそれらを含むブロックを受け取ることは決してない。」

 

ー最後に何か一言、仮想通貨業界全体に対して何かアドバイスはありますか?

私だったらプロジェクトの精査を始めとする「デューディリジェンス」にリソースを使います。

長期的に考えて現実性のない主張をするプロジェクトは多いです。

ドットコムバブルでもこのようなことはありました。

この業界へ投資をしている人は技術を評価できる専門家からにレビューをしてもらうべきです。


ーみんなアダムさんに聞くべきですね!(笑)

…(笑)

「自分でリサーチをするべき」と当業界でよく言われますが、様々な分野の専門的知識が必要なためリサーチを一人でやるのは非常に困難。

レビューを行う技術者もいますが、異なる見解や技術的な偏見があるので、複数の専門家たちから意見を聞くことが重要です。

それでも、今はとても興味深い時期だと思いますよ。

イノベーションはとても進捗が良く、沢山の技術が市場に登場してきています。

例えば、ユーザーやチャネルの数の短期的な推移を見ると、ライトニングネットワークはハイスピードで成長しています。

出典:p2sh.info

また、このような最先端技術の他にもユーザビリティの観点からの進捗も見られ、よりユーザーにとって使いやすいような製品がマーケットで姿を現しています。

振り返って見ると、ここ20年間で大きな変化がありましよね。

情報がグローバル規模で考えられるようになったり、世界の様々な地域の人と話せるようになったり、ワールド・ワイド・ウェブ、ソーシャルメディア、インスタントメッセージ、またビデオブログなんてものも登場したり。

これらはメディアのあり方を再定義し、社会での支配力を変化させました。

出典:サトシ・ナカモトのBitcointalkへの投稿

「20年以内に非常に多い取引量があるか、または取引量が全くないことを私は確信している。」

グローバル規模で使用される電子通貨などの新インターネットアプリが本格化したらどうなるでしょう。

ソーシャルメディアが社会的な変化を起こしたように、インターネットマネーも面白くなるかもしれまえせんよね。

しかも、まだ結果は見れていなく、まだまだ初期段階と言えるでしょう。

 

以上、Blockstream創設者であるアダムさんのインタビューでした!



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