Bitcoin.com代表取締役が語る「鉛筆から学んだ衝撃的な発見について」

Bitcoin.com代表取締役であるRoger Ver (ロジャー・バー)氏に仮想通貨ニュース.comが独占インタビュー!

「By virtue of exchange, one man’s prosperity is beneficial to all others.(取引において、一人の繁栄は他全ての人の利益となる。)」

これは「The Law (法)」を書いたフランス経済学者フレデリック・バスティア氏の有名な言葉だ。

また、「ビットコイン・ジーザス」としてこれまで業界をリードし、現在ではビットコインキャッシュを推奨している起業家Roger Ver(ロジャー・バー)氏の大好きな言葉でもあるという。

出典:ロジャー・バー氏公式ツイッターアカウント

仮想通貨は従来の決済システムをより効率化することで「世界をより繁栄させるような技術」だという、バー氏。

同氏の仮想通貨に対する情熱は、中学生の時から興味を持つようになった「経済の自由」について鋭く考察したオーストリア学派の経済学が根源にあるという。

そんな同氏が語ってくれた、「鉛筆」から学んだお互いを知らない世界中の人々が価格を通じて連動する方法。

また、経済学的に「価値」を考えることでわかる仮想通貨の価値。

そして、ビットコインジーサスとも崇められた同氏がビットコインキャッシュを奨励する「本当の理由について」ありのままお届けする。

*以下のインタビュー記事をより楽しむためにも、まずはこちらのショートムービー「I,Pencil」をご覧ください!

 
 


ー経済学の観点から仮想通貨に関するコメントをすることが多いロジャーさんですが、いつ頃から経済学に興味をお持ちなのですか?

経済学に興味を持ち始めたのは、私が13歳くらいだった時の夏休みでした。

お母さんが「もうゲームしちゃダメよ!」と言ってきたので、私は本を読むようになりました。

その時に偶然手にしたのが、オーストリア学派経済学の思想に大きく影響した経済者であるルートヴィヒ・フォン・ミーゼス氏の「Socialism (社会主義)」という本。

「社会主義賛成派の本かなぁ」と思いながらそれを読み始めたのですが、実際には社会主義や政府によって作られる経済が機能しない理由について書かれていました。

なぜなら商品や物がどのように作られるべきかということ分かるためには、どうしても「価格」が必要だから。

例えば、多くの人が毎日のように使用する鉛筆は、インク、ゴム、またプラスチックなどから出来ていますよね。

ですが、なぜ鉛筆がこれらのような素材から作られる「べき」か、ということを多くの人は知っているでしょうか。

鉄でも、ゴールドでもいいわけですし。

実は、世界中の人へ物や商品が何で作られるべきかということを伝えているのは「Pricing Mechanism (価格機構)」。

(*価格機構とは、需要と供給のバランスが価格によって調整されるという「市場機能」のこと。)

これによって、物を作るのに世界のリーソースを最も効率の良い方法で割り当てることができます。

例えばロシアのように、政府が価格機構を考慮せずに物の生産を支配しようとすると、どの材料を使うのがベストなのかがわからないため、経済や物の生産が上手く機能できません。

実際にも、中央集権型の政府が全てを決めようとするロシアは、アメリカの商品カタログを見なければどの材料を使うべきかはわかりませんでした。

このように、価格機構は物がどのように作られるべきであるかということを知るために必要不可欠。

この概念は当時の私にとっても興味深く、驚きの発見でした。

だって、価格がある種の「情報」を人々に伝えているのですよ!

こんな方法で、顔も合わせたことのないような多くの人々が協力し世界が機能していることはビックリするようなことでした。

ちなみにですが、このことを最も直観的に私に教えてくれたのが「I, Pencil」という10ページくらいのエッセイです。

出典:Foundation for Economic Education

この本は鉛筆が喋り出すところから始まるのですが、その鉛筆はこう言うんです。

「世界には、鉛筆の作り方を知っている人は一人もいない」って。

これを聞いた時に、「そんなの誰かは知っているでしょ!」なんて最初は思うかもしれませんが、鉛筆は興味深い説明を始めるんです。

まず、鉛筆を作るためには木を切り倒さなければなりませんよね。

もちろんそれをするためには、チェインソーが必要。

そのチェインソーも加工が必要な金属で作られていますが、それはどこから採掘して、どうやって加工されるのでしょうか。

また、鉛筆を持つ部分にはどうやって塗料が塗られていたり、そもそもどうやって塗料を作れるのでしょうか。

鉛筆についている、消しゴムの部分はどうでしょう。

原材料をインドネシアのゴムの木などから採集する必要があり、トラックでそれを工場へ運んで加工し、船で輸送しなければなりません。

このように、一見とてもシンプルに思えるような鉛筆でも、世界中の何百万人の人が携わっているんです。

この本を読み終えた時に、私は「誰も鉛筆の作り方を知らない!」と思うようになりました。

また、私が本当に面白いと思ったのが、全くコミュニケーションを取ったことがない世界中の人々が「価格機構」を通じでどのように物を作るべきかということ情報を伝えているということ。

鉛筆のような単純なものからロケットのような複雑のものまで、世界中の人々がお金と価格機構を通じて連動しているんです。

これは、仮想通貨にも繋がりますよね!

仮想通貨は政府が作り出している摩擦を取っ払うことができ、人々が中央集権型の政府が支配する法定通貨よりも簡単で迅速な取引を行うことを可能にします。

仮想通貨を使って早く情報を拡散できれば、人々が価格機構を通じでより効率的に連動できるようになるでしょう。

 

ー「価格」によって世界が連動するなんて考えたことはありませんでした!

このようなことは、学校ではあまり教えてくれませんよね。

「国富論」という有名な本を書いた近代経済学の父と呼ばれているアダム・スミスも、「鉛筆を作る人」について考察していました。

簡略して説明すると、もし鉛筆が欲しかったらコンビニ購入できますが、一つの鉛筆を自分で作ろうとしたらとても長い時間がかかりますよね。

しかし、「労働を専門化」すればこのような問題を解決できます。

労働者が一つのことに集中すれば物や商品を効率良く生産することができ、人々はそれらを取引をすることによって取引を行った両者が利益を得ることができます。

また、どんな売買においても取引を行う両者に得がなければ取引は始まらないため、より多くの取引が行われれば、より多くの人に利益が生まれます。

一方、人々の取引を制限するような行為は「世界が繁栄するのを妨げている」という見方もできるでしょう。

例えば、政府による特定の企業などへの「補助金」。

これが何かを簡単に説明すると、価値が評価されているところからのリソースを取り、あまり評価されていないところへそれを送るというものです。

例えば、米国政府は自動車製造企業であるChrysler社へ補助金を与えました。

現在では収益性のある企業となっているため、補助金は「成功」だったように思えるかもしれません。

しかし、そもそも政府が補助金を用意するために既に成功している企業からお金を取らなければ、私たちが今見ているような技術革新がもっと速かったかも。

テスラが10年くらい早く生まれていた…なんてこともありえます。

そのため、何が政府によって共有されており、それに対して何が代償となっているかを見定める必要があります。

政府によって援助された人々の話は分かりやすいですが、それによって痛めつけられた人々もいるということ。

もっと具体的な現実問題としては、経済の自由が制限されているために多くの赤ちゃんが死産していることが挙げられます。

これはツイッターでジョークにされた私のコメントですが、深刻な問題です。

政府がある企業を救済するために使用するお金は、もちろん他のことにも使えたわけであり、出産のプロセスを援助するような新たな医療系の会社に投資するというオプションもあったわけです。

ヘルスケアに投資ができるような金銭面で豊かな国をみて見ると、やはり裕福な国は赤ちゃんが出産時に死ぬ確率が低いです。

もしより多くの国を豊かにできれば、出産時に亡くなってしまう赤ちゃんの人数を減らせるでしょう。

 

ー仮想通貨はこの問題にどのように関係しているのでしょうか。

関係性はとても深いですよ。

まず、最も効率よく国を豊かにする方法は、自由貿易と自由市場。

経済的な自由がある国では、経済的成長が速いと言われています。

100年前の日本は今よりも貧しく、より多くの赤ちゃんが出産時に死にました。

しかし、現在の日本はより経済が発展しており、ヘルスケアシステムが改善されているため、赤ちゃんが死産するというケースは大幅に減少しました。

そのため、経済の成長を促進するためにできる限りの全てのことをやるべき。

経済の成長を毎年1%増やすだけでも、それが10年続けば…。

大きなインパクトを与えられるでしょう。

しかし、政府がこれをコントロールしようとすると、経済成長は遅延するものです。

さて、これがどのように仮想通貨へ関連するのでしょうか。

仮想通貨は、グローバル規模の「経済的な自由」を促進します。

なぜなら、誰もが世界中の人へ送金することができ、政府機関からの許可を必要としないため、経済発展のスピードが遅れることはありません。

仮想通貨を使って世界中の人々が取引できるようになることで、経済的な自由を拡大させ、それが経済の成長へと繋がります。

仮想通貨は経済の自由を促進するための便利な「ツール」となるわけです。

「自動車、食料、また他すべてのものと同じで自由市場は、政府よりも良いお金を供給できる。」

 

ー日常的に法定通貨を使用することができますが、仮想通貨との大きな違いは何ですか?

法定通貨との大きな差は、仮想通貨の発行枚数は明確に決まっていることでしょう。

日本には昔から「1円玉」がありましたが、第二次世界大戦前の「1円」がどんなものか知っていますか。

実は、1930年代の1円玉は現在のものよりも大きく、1オンス(=28.3グラム)の銀で作られていました。

また、「1円紙幣」というものもあったんです。

これら同じ「1円」の違いとしては、紙幣でお金を作った方が簡単で、1円玉を作るには実際に銀を掘り起こさなければならないということ。

さて、それから何が起こったかというと、日本政府はインフレを起こしたため、アルミニウムで作られているような今日の1円はほとんどの価値がありません。

ちなみにですが、1オンスの銀は現在1700円くらいの価格なので、日本政府は1円の価値を1700分の1へ価値を落としたということです。

それでは、米ドルも考えてみましょう。

1935年、1ドル玉は1オンスの銀で作られていました。

これは、1円が1ドルと同じ価値だったということを意味します。

それから、米国政府もインフレをおこし、それによって1ドルの価値は過去の15分の1へとなりました。

紙幣の根本的な問題は、政府がそれをいくらでも刷れて、それを一番最初に使用できるということ。

仮に偽一万円札を作り、それを大量に使ったら牢獄へ入れられますよね。

経済学の観点からこれを考えると、一万円札の供給量が増えるため、他の人の一万円札の購買力が下がります。

インフレは刷ったお金を最初に手に入れることが出来る人達以外にはいいことではなく、経済を遅らせます。

発行枚数が明確に定まっている仮想通貨は、政府がこのようなことを行う力を奪うことになるため、経済がより機能しやすくなるでしょう。

 

ーロジャーさんは以前ライトコイン創設者であるチャーリー・リー氏とビットコインの「潜在的な価値」について議論していましたが、ビットコインの「価値」やその誤解について教えてください!

出典:Roger Ver Debates Charlie Lee (FULL DEBATE) – What is Bitcoin?

オーストリア学派の経済学の基本理念の一つに、

The value is always in the eye of the beholder (物の価値は常にそれを評価する人の心の中にある

というものがあります。

例えば、あなたがジャケットを着ているとしますよね。

それはあなたにとっては価値があるかもしれませんが、サイズが合わない私にとっては同じ価値はありません。

また、チキンカレーがあるとしますよね。

もしあなたがそれを好きなら価値があるかもしれませんが、スパイシーのご飯が得意ではない私にとっては価値がありません。

このように、物は異なる人にとって、異なる価値があります。

また、「価値」はあるものを評価する人の心の中にあり、人の心がなければどんな物にも価値はありません。

もし地球上に人々が存在しなければ、金や銀に「価値」などないでしょう。

言い換えると、物に価値があるためには「意識のある存在」が必要だということ。

これらを踏まえた上で、ビットコインのマイニングについて考えてみましょう。

ライトコイン創設者のチャーリー・リー氏は、リソースを必要とするマイニングがあるためビットコインに潜在的な価値があると主張していましたが、この考え方はナンセンスです。

「共産主義宣言」というカール・マークスの書籍を読み通したことがあるんですが、「labor theory of value (労働価値論)」というものを提唱していました。

これが何かというと、もしあなたが物に対して多くの時間と労力を費やせばそれに価値が生まれるという考え方。

これは正しくない。

もし私が何時間もかけて泥パイを作ったとしますが、それに価値はないですよね。

しかし、それと同じくらいの時間をかけてアップルパイを作ったらどうでしょうか。

同じ時間をかけても、労力が価値を生み出しているわけではなく、人にとって何らかの「ユーティリティ(使い道)」があるものに価値があります。

アップルパイは食べれますが、泥パイであなたは何ができるでしょうか

仮想通貨マイニングでも、実は同じこと。

ビットコインの価値を生み出しているのは、何百万台ものコンピューターがリソースを費やしているからではなく、人にとって何らかの使い道があるから。

そのため、ビットコインには「intrinsic value (潜在的な価値)」はありませんが、人の心によって生まれる「imputed value (代入価値)」があるといえます。

重要なことは、ビットコインに潜在的な価値がなくとも、価値はあるということ。

 

ーそれでは、賛否両論あるビットコインですが、人々はビットコインにどんな価値を見出しているのですか?

まず、物に価値があるためにはそれが誰かにとって何らかの「ユーティリティ (使用用途)」がなければなりません。

鉛筆に価値がある理由は、それを使用して何かを書けるから。

日本で一万円に価値がある理由は、それを日本のどこでも使用できるから。

金や銀に価値がある理由は、それを使ってコンピューターなどの材料として使用することができたり、昔は通貨として使用できたから。

価値のあるもので、何かしらの便利な使用用途がないものはありません。

BTCを奨励する人々はビットコインの使用用途は単純に「価値の保存手段」ということだけで、他の使用用途はいらないといっています。

この場合、ビットコインの使い道はなんなのでしょうか。

BTCサポーターは将来的な利便性を憶測しているのかもしれませんが、彼ら・彼女らはBTCの思想リーダーがビットコインの「商用目的」に敵対的であることを知らないのでしょう。

そのため、私はビットコインキャッシュ、イーサリアム、ダッシュのような実際に何かに使用できるような「通貨」を奨励しています。


「BTCサポーターは、ホワイトペーパーのタイトルに書かれているビットコインを定義するユースケースに反対している。BCHがビットコインだ。」

 

ーよく仮想通貨業界で話題になる「分散化」についてどのように考えていますか。

「分散化」も何か目的を果たすためのあくまでもツール(道具)であり、ゴールではありません。

iPhoneが便利な一つの理由は、メッセージを送るために便利な「ツール」だから。

iPhone製造工場にも同様なことが言え、それ自体には使い道はないですが、iPhoneを作り出すためには便利な「ツール」と言えるでしょう。

これと「分散化」の使い道も同じようなもので、何か利便性のあるものを作り出すためのツールに過ぎません。

製品が「分散化」しているだけでは使い道などありません。

仮想通貨において、「分散化」は中央集権型の機関からのお金における検閲を逃れるための便利な「ツール」です。

例えば、完璧に分散化されているビットコインのネットワークがあるとします。

しかし、あなたはこれを使って特に何かできるということはありません。

これは便利でしょうか? もちろん違いますよね。

仮想通貨における分散化の使い道は、「誰にも止められない決済ネットワーク」を作り上げるということ。

もう一度言いますが、ゴールは検閲のない決済ネットワークであり、「分散化」はあくまでも便利なツールです。

 

ー最後に何か一言ありますか。

 

 
「I, Pencil」からも分かるように、世界で何かが作られるということはもの凄いことですよね。

私がビットコインキャッシュに夢中な理由は、世界中の人々がより効率的に取引ができるようになるからです。

政府はよく「認可が必要!」や「ライセンスが必要!」などと要求してきますが、これは世界中の人々が「I, Pencil」で示されているようなコラボレーションの妨げとなっています。

しかし、ビットコインキャッシュは「経済の自由」を促進するでしょう。

「I, Pencil」を見た後は、ちょっと世界の見方が変わりませんでしたか?

私にとっては衝撃的な発見でした。

人々は、お互いを知り合っていなくともグローバル規模で連動できるのですよ。

私は毎日昼食を食べにどこかのレストランへ行きますが、レストランで働いている人は私がビットコインキャッシュを広める上で重要な役割を果たしています。

また、私が払うお金はそこで働いている人の家族のためになったり。

このように交流している相手を全く知らなくとも、取引によって世界は回っており、協力し合っています。

ビットコインキャッシュは、それを今よりも効率良いものへと導くでしょう。

だから、私はビットコインが「決済に使わるべきではない」なんてことを聞くとガッカリするんです。

根本的に間違っている、ってね。

  
以上、Bitcoin.com代表取締役ロジャー・バー氏のインタビューでした!



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