BlockstreamのCSOが語る「身をもって知ったビットコインの”成長痛”について」

Blockstream(ブロック・ストリーム)CSOのSamson Mow(サムソン・モウ)氏に仮想通貨ニュース.comが独占インタビュー!

数千銘柄というアルトコインが存在している中、なぜ依然としてビットコインが仮想通貨の「キングの座」に君臨し続けているのだろうか。

取引手数料が高い上に、送金するのにも時間がかかるビットコインになぜそこまで世界は注目するのだろうか。

Blockstream社最高戦略責任者兼Pixelmatic代表取締役であるサムソン・モウ氏によると、ビットコインの価格変動、送金手数料、またハードフォークに関しては様々な誤解があるという。

Blockstream社最高戦略責任者、サムソン・モウ氏

ブロックチェーン技術全般ではなく、「ビットコインブロックチェーン技術」を強調する、モウ氏。

仮想通貨の話題に関して、ウォールストリートの謳い文句となっている「ビットコインではなく、ブロックチェーン技術」という言葉はナンセンスだという。

そんな同氏が語ってくれた、アルトコインには見られないビットコインの優位性。

ハードフォークを機に生まれたビットコインに関する多くの誤解や教訓。

そして近未来の金融インフラとなるまでのビットコインのこれからの道のりについて、ありのままお届けする。

 
 

ーサムソンさんのこれまでの経験を教えてください!

この業界に入れたのは「好運」だったかなと思います。

私がビットコインについて初めて聞いたのは、主流メディアで取り上げられるようになってからでした。

その時、ビットコインは中央集権型の機関が存在しない「独立した生体」のように思えましたね。

当時オンラインゲーム業界にいた私にとって、ビットコインは興味深いものでした。

というのも、実はオンラインゲームの世界にも独自の経済が存在するものなんです。

企業に管理されるゲームコインには、流通市場みたいなものまで存在します。

その後は、業界初期にビットコインの取引量が最も多い取引所の一つだったBTCC取引所のCEOボビー・リーと数年間一緒に働いて、アダム・バック氏率いるBlockstream社に加わりました。
 
 

ーいわゆる仮想世界の「ゲームコイン」の独自の経済とはどのようなものですか?

ゲーム世界には何かしらのコインが存在し、プレイヤーが開発業者からそれを購入できる場合が多いです。

また、コインの価値はユーザー数が増えるにつれて上昇し、現実の経済と似たようなものが形成されていきます。

それ故に、ソーシャルゲーム開発をしていた私たちの企業は、90年代後半から経済学者を雇うようになりました。

ゲーム世界のインフレやデフレなどに対応しなければならないですからね。

例えば、Smurfsという成功したソーシャルゲームに先駆けるCastle & Coというゲームがあったんですが、ゲームで使われたり、供給量から取り除かれるよりも多くのコインをプレイヤーが稼げてしまう、ということがありました。

要するに、インフレの問題です。

これの間に合わせの対応として、私たちは通常よりも高価なアイテムを作らなければなりませんでした。

コイン価値がなくなってしまいますと、誰もコインを買わなくなりますからね。
 
 

ーサムソンさんはお金の歴史を踏まえてビットコインを説明することが多いですが、そもそも「お金」はどのように進化するものなのでしょうか?

出典:Samson Mow ‘The Rise of Digital Money: Bitcoin and the Future’

お金の進化には幾つかのフェーズがあり、人々が一般的に考えるようなものとは異なるケースがあります。

実際にも仮想通貨業界の一部の人たちは、お金が「価値の交換手段」から始まると信じていますよね。

しかし、新しいものは「collectable (収集価値のあるもの)」から始まり価値の保存手段へと移り変わるものです。

これに関して、ゴールドが分かりやすい例かもしれません。

人々は光沢のある魅力的なゴールドを「綺麗だ!」と言ってコレクションし始めましたが、時間が経つにつれて新たな性質に気づくようになりました。

その後、価値の交換手段として交換されるようになり、それ故にゴールドは「価値の尺度」として扱われました。

しかし、ゴールドはそもそも価値の交換手段としては完璧なものではなく、持ち運ぶのが困難で重い。

実際にも、ゴールドで価値を担保された「紙幣」を通じて価値尺度として使用され、ゴールド「そのもの」が尺度として使われることはあまりなかった。

この点において、ビットコインはゴールドと異なると考えられます。

デジタルなビットコインは、価値の保存手段、価値の交換手段、価値の尺度として、同時に成長しています。
 
 

ー激しい価格変動があるビットコインですが、価値の保存手段として成り立つのでしょうか?

価値の保存手段としてBTCは批判されてますが、これは多くの人が短期的に物事を考えているからだと言えます。

ビットコインは誕生してからたった10年しか経っておらず、これは何かが進化するにおいて短い時間です。

しかし、技術革新の著しさもあり、ゴールドが価値の保存手段へと進化するのにかかったような数百年という長い時間は必要としていません。

ビットコインが誕生してから最初の数年間は誰も気にしないような一部の人々にとっての「コレクション」。

それでも、10年も経たない内に価値の保存手段として使用されるようになるまでに進化しました。

もし数年前にビットコインへ投資していれば….。

長期におよぶ弱気市場を経た今ですら400%以上のリターンを得られています。

出典:coinmarketcap.com

しかし、問題としてはメディアが価格が80%以上暴落するなど市場がどのように動くのかを理解せずに扇情的な報道していることが挙げられます。

私はBTC価格が1万ドルの時にお祝いをしたことを覚えていますが、2万ドルに達した時は何も言いませんでした。

このような価格帯はそもそも継続できるようなものではなかった。

それでも、メディアはこのような持続不可能な最高値から値崩れしたことを誇張。

1年単位で見るところのこの数字は正しいですが、2年で見ると価格が4倍以上になっているのも紛れもない事実です。

もちろん2万ドルで投資した人にとっては悪い価値の保存手段かもしれませんが、このようなリターンが得られる金融商品はどこにも存在しないでしょう。

また、価格変動に関しても、論を俟たない程BTCにボラティリティがあると断言できますが、ビットコインが初期段階であることも事実。

24時間や1週間という時間枠で見ると価格変動に関する批判も分かりますが、数年単位で見ると法定通貨に対して常に上昇方向に進んでいます。

いつもです。

ビットコインがポテンシャルを発揮にするには時価総額が1兆ドルを超える資産になる必要があると個人的に考えていますが、それまで上昇下落があるのは自然なこと。

BTCにおけるこれまでの価格サイクルを見ると、高騰、暴落、回復、そして前回の最高値更新という繰り返し。

全てのサイクルがこんな感じなんです。

これは、4年に一回行われるビットコインのブロック報酬の半減と相関性があるかもしれませんね。
 
 

ーサムソンさんはよく概括的なブロックチェーンではなく「ビットコインブロックチェーン」を強調しますが、それはなぜでしょうか?

確かにブロックチェーンは興味深いかもしれませんが、それはビットコインを構成する一つの技術に過ぎません。

暗号法、デジタル署名、タイムスタンプなどが織り混ざったものがビットコイン。

ブロックチェーンだけで考えると、一種のデータベースだと捉えられます。

それなのに、人々はビットコインとブロックチェーン技術を混同し、ビットコインの不変性、頑強なセキュリティ、そして改ざん不可能性がどのブロックチェーンにもあると勘違いしています。

あなたのコンピューターでブロックチェーンを使うと、普通のデータベースよりも安全性が向上されるでしょうか。

そんなことはないですよね。

プライベートブロックチェーンでも同様なことが言えます。

いくらブロックチェーンをアピールしても、もし一部の人間のみしか承認を行えないならば、エンドユーザーにとっては紙に書いたものがどこかに保管されているのとあまり変わりません。

要するに、プライベートブロックチェーンでは「信頼」のモデルがブロックチェーンを使う「前と後で全く変わっていない」ということ。

また、ブロックチェーン技術を掲げるプロジェクトは多いですが、そのほとんどは安全とは言えません。

他のもので例えると、「金属」でできている防弾機能がある鎧があるとしますよね。

また、全く同じ形をした「木」で作られた鎧があるとします。

多くのプロジェクトは、金属の鎧と同じ形をした木の鎧にも頑強な防弾機能がある、と主張している感じ。

「ブロックチェーン」という言葉を使うことで、人々に投資させようとしていますが中身は空です。
 
 

ーサムソンさんは「ビットコインネットワークは決済ネットワークを作るのに向いていない」と以前コメントしていましたが、これはどういうことでしょうか?

出典:FIRESIDE CHAT: One-On-One With Samson Mow

もし決済システムを今日構築する場合、決済を出来るだけ早く可能にするものです。

例えば、あなたがコンビニで決済する際に、取引が承認されるのを10分間も待つなんて考えられないですよね。

また、ビットコインの場合は10分という数字はあくまでも平均であり、1時間以上を要することも。

そのため、決済がされるまでどれくらいの時間がかかるか不明なビットコインネットワークは、決済のものとしては合理的だとは言い難い。

システムの特徴を大きなスケールで捉えるのと、小さなスケールで考えるという違いかもしれませんね。

昔は「金箔」で取引を行っていましたが、取引サイズが大きい場合は「金塊」で支払われました。

でも、重い金塊を持ち運ぶなんてことはあまりなかった。

取引サイズが小さかった時は薄くて軽くとも、取引が大きくなるにつれ、より厚く、重くなります。

ビットコインの場合でも、あまり価値がなかった時は就学決済用に使用できたかもしれません。

しかし、ビットコインの決済ネットワークを使用するためにはBTCで手数料を支払わなければならないため、ドルに対してBTCの価値が上昇すると、支払いを行うにもより多くのコストがかかるようになります。

あなたが金塊を送る手数料に、法定通貨ではなく決まった量の金塊の一部を渡す必要があるという感じ。

仮に金の価値が100倍高まる場合は、それを送るためのコストも100倍上昇します。

もしBTCが世界の通貨となり、価格もそれ相応に上昇する場合、それを送金するための手数料は上昇します。

効率性は、スケールで異なるものです。

飲み物を買うのに100円は便利ですが、車を買うのに100円玉だけを使ったら、それが沢山必要なため非常に不便。

ビットコインの価値があまりない時は手数料も少なく、ビットコインの価値が上がると必然的に手数料も上昇するため、少額決済のような一部の決済手段としては使用するのに合理的でなくなります。
 
 

ーBTCの取引手数料は「高価すぎ!」と批判されていますが、これについてどのように思われますか?

これについては、ビットコインのマイニングから考える必要があります。

マイナーは、ブロックを見つけることによる「ブロック報酬」と送金者から支払われる「手数料」からBTCで収益を上げることができます。

また、ブロック報酬は時間が経つにつれて定期的に減少するようにビットコインでは予め決まっています。

しかし、ブロック報酬はマイニングを行うそもそもの重要な動機であるため、いつかのタイミングで手数料がブロック報酬の減少に適応しなければなりません。

ブロック報酬半減によりBTCの価格が向上すれば、手数料はそこまで関係ないかもしれません。

それでも、市場をベースとして機能するようなビットコインにおいて、手数料は必要な要素。

もし手数料がなければ、人々はデータをブロックチェーンに詰め込むことなどのことを始めるでしょう。

これは、効率的なブロックチェーンの使用ではなく、それを制するためにも手数料を設けることで限られたブロックのスペースを無駄にするのを防ぐことが必要。

1ブロックには限られた量の取引しか入らなため、いずれは特定の種類の取引は経済的に不合理になるでしょう。

例えば、3ドルを支払うために、1ドルの手数料は払うのは合理的ではないですよね。
 
 

ービットコインのユニークな思潮とも言える、「ハードフォーク」についてどのように考えていますか?

ハードフォークは、概念的にはシンプルなものです。

もしコンセンサスにとって決定的となるようなシステムの規則を変更したら、ハードフォークが起こります。

過去のものを捨てることで新しいものをスタートし、多くの人がそれに賛同して従うのを望むという。

ビットコインのハードフォークに関する「気風」として言えることは、多くの人がビットコインは簡単に変わるべきでないと考えているということ。

そのため、浮ついたようなフォークは拒絶されます。

ビットコインは、沢山のルールから成るソフトウェアです。

最も有名なルールは、発行枚数上限が「2100万枚」と定まっていることやブロックサイズが「1MB」などなど。

これらのルールはビットコインを特徴付けるため、変更されるべきではありません。

また、ハードフォークはいつも悪いことではなく、人々は自分が好きなソフトウェアを使えるべき。

悪いのは一部の人たちが他の人々を欺くことです。

ルールを変更するのにそれをしないと言ったり、「これがオリジナルのビジョンだ」なんて言ったり。

しかし、将来に関して何か賛成できないなら、好きなようなソフトウェアを変更し、好きなものを使用すればいい。

これに何も問題はありません。

そもそも人々は全てのことにおいて賛成できないもの。

ビットコインキャッシュがビットコインから生まれ、またそのコミュニティは分裂しましたが、これ自体に何も問題はなく、好きなようにやればいいだけです。

問題としては、それぞれが「本物だ」と主張して人々を巻き込み、ルールを変更しているという事実をしっかりと説明していなかった。

例えば、主張していたこととは反対に、現在のソフトウェアのバージョンに「Backward Compatible (後方互換性)」でなかったりします。

(*後方互換性とは、古いバージョンに互換性を持つ新しいソフトウェアの性質。)
 
 

ー2018年に、俗に言う「ハッシュ戦争」が大きな話題となりましたが、物議を醸すようなハードフォークは世界規模の新たな金融インフラを作るのに絶対になくてはいけないものなのでしょうか?

最終的には必要だと思います。

これは要するに「成長痛」のようなものだと私は考えています。

子供の頃に雍歯がありますが、歯を抜くのは気持ちが良いものではないですよね。

しかし、大人の歯が生えてくるには必要。

実際にも、ハードフォークを乗り越えた後は、ビットコインに対するコミュニティの理解度が増し、ビットコインが現実世界でどのように機能するのかがわかりました。

というのも、ハードフォーク前の2015年は単なるアップグレードのように捉えられていましたが、実際にハードフォークを経験したり、その結果を見ると、決してそのようなものでないことがわかりますよね。

「フォーク」と言うだけあり、分裂を意味し、何かしらの「大きな」ルールの変更があります。


ハードフォークは崖から飛び降りるようなもので、全員が一度にジャンプした場合にのみ生き残れる。ユーザーがそうしないと言った場合、それはただの自殺のようなものだ。

 
 

ー過去のハードフォークの「教訓」は何ですか?

まず、ビットコインは「Opt-in (選択できる)」システムであり、ルールに毎回従う必要はないが、ビットコインを大きく変えられないということ。

また、コミュニティが平等に分裂することはなく、新たな意見は大多数の意見であることは少ないということ。

例えば、ブロックサイズに関する議論において、「ブロック容量が大きければ、手数料を低くできる」ということは概念的に誰もが理解できます。

しかし、この部分だけに注目してし、システムの他の面を考慮しないと、「コモンズの悲劇」を引き起こします。

送金手数料のコストを削減できても、そのコストは誰かが必ず支払うことに。

もしブロックサイズを大きくすると、例えばノードになるのがより困難になります。

つまり、送金するには都合が良くなるかもしれませんが、フルノードになる負担が大きくなるということ。

これはハードフォークを乗り越えてコミュニティ全体が身をもって知った教訓と言えるかもしれませんね。

フルノードになれるかどうかは重要だと。

もし誰もがフルノードになれないようならば、銀行にお金を預けているのと一緒。

このようにハードフォークを行うのは自由でも、大きく規則を変えてはもうビットコインではありません。

これは、過去のハードフォークからの大きなレッスンですね。
 

ーハードフォークでもビットコインの重要なルールは変えられないというわけですね。

また、ビットコインは何かに妥協するのようなものではありません。

妥協は政治の領域にあるもので、ビットコインは「apolitical (政治に無関心)」。

もしブロックサイズに妥協ができれば、インフレの方針を変更するなどの妥協ももちろんあり得ますよね。

このような妥協を許すと、ビットコインの存在価値は無くなりゴミと化すでしょう。

また、ビットコインは単なるコンセンサスルールの集まりであり、ビットコインが誰も他の人の意見を強制できないということは重要です。

言い換えると、「Self-sovereign(自己主権型)」です。

ユーザーはどのソフトウェアを使用するかを選択できます。

それがネットワークのコンセンサスルールの場合もあり、もしブロックサイズを大きくしたかったら、元のネットワークから離れなければなりません。

また、ビットコインは「後方互換性」があるため、ユーザーは古いバージョンのままで、アップグレードをしなくともビットコインを使用できます。

一般的なコンピューターはよくアップグレード通知をしてきますが、ビットコインは誰にもそれを強制できません。
 
 

ーサムソンさんが感じるビットコインに関するよくある「誤解」は何かありますか?

一番大きな誤解は、多くの人が「Instant gratification (瞬間的な満足)」に慣れているため、ビットコインを単純なアプリだと考えていることだと私は思います。

数字がお金を表していることに大半の人々は慣れているため、キャッシュからキャッシュレスの社会へ移行しようとしている中、ビットコインを数字として捉えているのかもしれません。

ですが、ビットコインはソフトウェアであり、もしあなた自身が実際にソフトウェアを使用していなかったら、実際に資産を自己管理しているとは言えないんです。

そのため、人々はフルノードになることの意義や重要性について学び始めています。

フルノードになる、またなれるという選択肢があることは重要であり、もしこれをやっていない場合は「SPVウォレット」のようなサービスを使用しているだけ。

このようなサービスはどのフォークに従うかを勝手に選択するため、ユーザーはそれに従うしかありません。

そのため、現在ではより多くの人がこれに気がつき、ノードになっています。

それでも、ビットコインに対する理解度はハードフォークを経て大きく変化したと思いますよ。

以前は多くの人がビットコインを理解していたわけではなく、アップグレードを促すことでビットコインを攻撃できたかもしれませんが、もうこのようなことはできないでしょう。

先程話していた「成長痛」と言う奴ですね…。

ビットコインに対する攻撃は、ビットコインをより強いものに。

コミュニティは学習し、メディアも人々へその機会を提供します。

そのため、業界全体としてビットコインの理解度が信じられないほど向上したのではないかと考えています。

ちなみにですが、拡張性に関するハードフォークが発生する前は、多くの人は開発者を責め立てることが多かった。

「なんで変更を加えてない」や「なんでアップグレードしていないんだ」ってね。

しかし、オープンソースで分散型のプロジェクトでは、開発はこのようなことを行うことはできず、唯一できることとすれば、あるアイデアを推奨するくらい。

しかし、分散型のものに対して、中央集権型のものように動くことを期待するのは間違っています。

ビットコインはオープンソース、ユーザー主導、後方互換性、不変、デジタルゴールド、そして地球上で最優秀な開発チームによって支援されている。

 
 

ーもしサムソンさんが「魔法の杖」を持っており、ビットコインのルールを一つ好きなように変えられるとしたら、それは何でしょう?

私だったら、初日からビットコインに「匿名機能」を搭載していたと思います。
 

ー近い将来にビットコインに匿名性をつけるには、やはり新たなハッシュ戦争が必要でしょうか?

以前インタビューでビットコインの「匿名取引(CT)」にはハードフォークが必要と言ったことがありますが、私は間違っており、ソフトフォークでも大丈夫です。

しかし、それだとしてもこれは重要な論争点になると思います。

一部の取引所はこれを良くは思わないでしょうが、現時点でどうなるかは予想できないですね…。

ハッシュ戦争が教えてことは、結局はユーザーがほしいものになるということ。

ビットコインを使用する人々がビットコインの将来を決めます。

個人的には、より優れたプライバシー機能が必要かな、と思っています。

これにより、ビットコインが本当の「サウンドマネー」になれる。

もし「クリーンなコイン」や「汚いコイン」という概念がある場合、いいお金だとは言い難い。

そもそもこの判断には、「何がクリーンか」という主観性が必要になるだけでなく、そもそもユーザーがビットコインがクリーンかどうかを心配しなければならないのは良くないです。

よく取引所で言われているのは、6回以上のホップ(資金の移動)で汚いコインがクリーンになるということ。

でも、これは意味のないメトリクス。

また、もしあなたが技術的な知識を持っていれば、ビットコインを使って匿名取引もできないことはないんです。

しかし、ビットコインがお金となるには、みんながこのようなプライバシー機能にアクセスできるようになるべきではないかと思っています。
 
 

ー当業界は今どこへ向かっていますか?

ライトニングネットワーク」の進捗状況が好ましい中、BTCは価値の交換手段としても成長していくでしょう。

ライトニングネットワークを採用するウォレットを使用することで一般ユーザーにとってビットコインを使用する摩擦がなくなるため、ビットコインが便利な決済手段となります。

これは「circular economy (循環型社会)」を生み出すと思います。

人々がビットコインで給料を貰い、ビットコイン払いをするようになるという。

なぜなら取引手数料がライトニングネットワークはほんのわずかで、瞬時に取引が可能だから。

この手数料という摩擦をライトニングネットワークのような方法で取り除くことにより、ビットコインの使用用途はとても拡大すると考えられます。
 
 

ー今後「5年」で何が起こると思いますか?

今後5年以内にBTCが日常生活で使用されるようになると思います。

なぜなら、有名決済プロセッサがライトニングネットワークを採用するようになるだけだから。

ツイッターCEOのジャック・ドーシー氏がライトニングネットワークに「gung-ho(熱心に献身的)」なことは、有名なことかもしれません。


私は(ビットコインの)技術とコミュニティが大好きだ。節操としていて、目的に向かって動き、エッジが効いていて、とても面白い。インターネット初期のようだ!

そんな彼は決済プロセッサ大手のSquare社を保有しています。

Square社がライトニングネットワークを採用すると、瞬時的にビットコインはそこら中に広がるでしょう。

現時点では各業者にBTCを採用するように説得する必要があるんですが、プロセッサレベルで一度に導入されるのは非常に合理的。

これによって、ライトニングネットワークがビットコインの手数料やブロック時間などの摩擦を取り払います。

クレジットカードやスイカのようなシステムを遥かに上回る便利なものです。

また、業者は常にベストなお金を取り扱いたいもの。

日本円かベネズエラのボリバルどちらがいいかと聞かれたら、もちろん日本円というでしょう。

しかし、BTCと日本円どっちがいいかと聞かれたら、私だったらBTCと言います。

誰かを傷つけるつもりじゃなくて、人々は「ベストなお金が欲しい」というだけの話です。


検閲のないサウンドマネーに”次の大きなもの”はない。しかし、光沢あるおもちゃには、いつももっと輝くものがある。

 
 

ー業界初期から仮想通貨市場へ参加することは様々な面から考えてもリスクだったと考えられますが、サムソンさんはなぜそのような決断をしたんでしょうか?

個人的には、ビットコインが存在しないということの方が大きなリスクだと考えており、ビットコインが私たちをより良い将来へ導いてくれると思っています。

例えば、最近話題となっている、全ての取引が監視されるという監視資本主義は様々な観点から考えていいもののように捉えられません。

また、多くの人々が近い将来に銀行アカウントを持てなくなるかも。

しかも、これは発展途上国の人ではなく、先進国に住んでいる人もです。

なぜなら銀行がコンプライアンスにかける費用を考慮した上で、全員の銀行口座を保つことが経済的に実行可能でなくなる可能性があるから。

銀行口座のお金が少額である場合、それを使って銀行は儲けることはできません。

しかし、多額のお金を預けるのなら、銀行はその人の経歴を審査する人を雇ったり、口座を開いたり、アカウントの動きを監視したりするために費用を掛けられます。

もうお分かりの通りですが、ビットコインでこのようなことは関係ないです。
 
 

ー最後に何か一言ありますか?

ビットコインは私たちの「新たな未来」を構築しています。

もしビットコインをみんなが使うようになり、それでプライバシー機能もあれば、全てが効率化され、コンプライアンスを心配する必要がなくなります。

他のものに例えると、空港に行く時に必ず行うセキュリティチェックのようなもの。

これは空港のみで行われますが、もしこれを地下鉄でもやる必要になったらどうでしょうか。

大きな負担ですよね。

ビットコインが使われるようになれば、このような問題は起きません。

また、「お金は権力だ」という言葉がありますよね。

人々によって価値があるとみなされているビットコインは、通貨や国家と同じような社会的構成概念です。

グローバル規模のコンセンサスをベースとするオーガニックなビットコインか、一部の地域の中央集権型の機関によって発行されるお金か、人々は今後どちらを好むようになるでしょうか。

このような考え方をし始めると、人々は自然とビットコインに惹かれます。

世界には多くの問題があり、例えば最近ではベネズエラにおけるハイパーインフレが問題になっていますよね。

インドでも、高額紙幣が使用禁止になり、人々はそれらの価値がなくなる前に銀行の前に並ぶなんてことも…。

誰もこのようなことが先進国では起こらないだろうと思っています。

でも、その可能性が少しでもあることを考えると、色々と考え直す人も増え、ヘッジ手段を探し始めます。

また、「監視資本主義」のような概念もありますよね。

特にキャッシュレス社会が促進されると、このようなことはますます心配されます。

このような将来に対し、ビットコインは重要なヘッジとなるでしょう。
 
 
以上、Blockstreamの最高戦略責任者であるモウさんのインタビューでした!



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