ハーバード特別研究員マサド氏、仮想通貨取引所にはもっと「規制」が必要

「仲介者」や「仮想通貨取引所の規制」を始めとするブロックチェーン業界のホットな話題に関して、米金融専門家が鋭い考察をまとめた。

マネーロンダリングやテロ支援など、様々な金融犯罪を簡易化する可能性を危惧する世界中の政府によって進めれれている、仮想通貨規制。

最近では、取引所へのハッキングが続いた日本でも仮想通貨交換業に関する規制の変更が報道されている。

そんな中、ブルッキングス研究所が、ハーバード大学特別研究員であるティモシー・マサド氏によって執筆された仮想通貨規制の改善を求めるレポートを発表した。

果たされなかったビットコインの「約束」

米元大統領であるバラク・オバマ氏の政権時に、CFTC(米国商品先物取引委員会)の委員長を務めたことがあるマサド氏が、仮想通貨規制の必要性を60ページ以上に渡って概説した。

出典:It’s Time to Strengthen the Regulation of Crypto-Assets

同氏によると、現在の仮想通貨市場には証券やデリバティブに課されたような規制枠組みが存在しないため、潜在的に詐欺が横行する可能性が高いという。

また、このような投資家保護の欠如は仮想通貨ユーザーを「傷つけるだけ」だと主張し、監視の欠如が「詐欺、市場操作、利益相反」が繰り返されていることに繋がっている、と付け加えた。

そのため、同氏によると、投資家保護の措置を講じながら「運営リスクを最小限に抑える規制」が必要だそうだ。

「仮想通貨取引所には、利益相反を防止・最小化するための規則や、詐欺や改ざんを防止するためのシステムが必要とされていない。例えば、(規制された従来の証券取引所である)NY証券取引所なら絶対に許されないような、顧客に対する”自己勘定取引”を仮想通貨取引所は行うことができる。そのため、証券やデリバティブの仲介業者と同様に、運営リスクを最小限に抑え、システムの安全対策を確実にするための規制が必要だ。」

また、ビットコインが果たしていないホワイトペーパーの「約束」についても同氏は言及し、以下のように述べた。

「ビットコインやその他の仮想通貨を取り巻く誇大広告が、規制上の注意散漫につながっている。中央集権型の金融仲介業者への依存を減らすことを、”信頼の問題”を解決するビットコインで実現する、と考案者は約束した。しかし、仲介者への依存が減ったり、金融大手の力が侵害されることはなかった。それどころか、大手銀行よりも説明責任の少ない(仮想通貨取引所のような)新しい金融仲介者を生み出した。」

ビットコイン支持者は仲介業の本質を「理解していない」

「買い手と売り手」や「貯蓄者と借り手」を結びつけるために出現した仲介者は、歴史を通じて「何らかの形での仲介は常に存在する」と語った、マサド氏。

仲介者の存在自体そのものが問題だとは見ていないようだ。

「分散型のP2Pネットワークで(金融業界における仲介者に関する)問題を解決できることを示唆するのは、単に楽観的すぎるだけでなく、文明そのものと同じくらい古い金融仲介の”本質”を理解できていない…要するに、金融業界の仲介者は、分散型台帳技術のような新技術で解決する問題ではなく、”ニュートンの宇宙を支配する法則”に近いものと考えるべき。」

ティモシー・マサド氏、FIA’s 41st Annual International Futures Industry Conferenceにて

さらに、仮想通貨取引所が従来の金融サービス業者と同じ標準で規制されていないことを批判し、それらの具体的な違いについて次のように説明した。

「多くの仮想通貨取引所は、顧客資産を管理しているため、ユーザーはそれをスマホで保管したり、送金する方法を考え出す手間が省ける。一部の投資家は、仮想通貨を保有してくれるウォレットサービスを使用する…証券およびデリバティブの世界では、リスクがあるため、取引プラットフォームを保管機能から切り離すことが法律上で義務付けられている。また、企業資金と顧客資金を分離するなどの顧客保護ができるように設計されている。仮想通貨の世界には、このような要件がない。」

仮想通貨交換業における「規制の欠如」について指摘する専門家は同氏だけではない。

例えば、当業界初期から参入していたウィンクルボス兄弟も、ジェミニ取引所を通じて米国における仮想通貨規制の推​​進力となっている。

☞Gemni取引所創設者ウィンクルボス兄弟、ビットコインが長期的な「勝者」

非中央集権化を強調することが多いクリプト業界だが、これからは「省かれるべき仲介者」と「本質的に必要な仲介者」の違いにも注目するべきなのかもしれない。

ここまでの内容と考察

元CFTC委員長が、仮想通貨取引所規制の必要性について考察したという、今回のニュース。

仲介者は「宇宙の法則」だというマサド氏の今回の指摘ですが、同氏以外にも完全な分散化は不可能だという見解を持っている業界人は少なからずいるようですね。

ちなみにですが、同氏は既存の法律を改善するのではなく、「新しい法律を作るべき」だとしています。

「SECとCFTCはそれぞれ管轄権を持っており、執行努力に励んでいる。しかし、権限のギャップがあるために、それらだけでは十分でない可能性もある。さらに、2つの機関は資金に余裕がなく、新しい分野を適切に対処するために追加のリソースを必要だ。」

このような点からも、仮想通貨・ブロックチェーン技術専門の規制機関が存在するようなマルタを始めとする小規模な国家は、これから仮想通貨の普及を促進する原動力となるかもしれませんね。

☞GLOBIANCE取引所創設者が語る 「近未来を見据えたマルタ仮想通貨規制について」

今後も各国の仮想通貨規制について注目していきましょう!

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