TONGBLOC代表取締役が語る「サトシナカモノの思想を継ぐ個人データ革命について」

TONGBLOC(トン・ブロック)代表取締役であるJin-gil Lee(ジンギル・リー)氏に仮想通貨ニュース.comが独占インタビュー!
 
ブロックが初めてマイニングされた2009年からビットコインを知っていた人は実際にどれくらいいるだろうか。

その中ですぐにビットコインの潜在的なポテンシャルに気付けた人はどれくらいだろうか。

ブロックチェーンリサーチ企業トン・ブロック社、KCX取引所及びオープン・ブロックチェーン・コンソーシアムの代表取締役であるリー氏は、そんな一握りのアーリーアダプターだ。

「分散化の概念」と「個人データの重要性」を何よりも強調する韓国ブロックチェーン業界主導者、リー氏。

ジンギル・リー氏(右)シカゴで開催されたプライベートミートアップにて

サトシ・ナカモトが生み出したような「仲介者を必要しないシステム」を開発しているだけでなく、データ管理がより公平に行われるような近未来のインフラを構築している。

リー氏が手掛ける「DTOPプラットフォーム」は、従来の個人データが管理される方法を一新し、既存インフラから欠如している「公平な富の分配され方」を実現させるという。

そんな韓国仮想通貨業界を牽引するリーダーが編集部に語ってくれた、「データ」の重要性とブロックチェーンの可能性。

また、分散化の思想を貫き通すブロックチェーン技術だからこそ現実化できるかもしれない「富の再分配」。

そして、従来の個人データ管理に革命を起こそうとするこれからのTONGBLOCについて、ありのままお届けする。

 
 
ージンギルさんのこれまでの経験について簡単に教えてください!
 

私は昔から新しいことを試すのが好きで、小学校の時くらいから「プログラミングをやってみたい!」となんて思っていました。

コンピューターをいじり始めたのも12歳くらいの時でしたね。

当時オセロのような簡単なゲームを作ったのを覚えています。

また、「COBOL」というプログラミング言語で、家の近くのビデオ屋さんのために、誰かビデオをレンタルしたかを記録するデータシステムも構築しました。

そんなこともあり、大学ではデータ圧縮やライブストリーミングなどのマルチメディアに関することやコンピューターに関する専門的なことを学んでいました。

卒業後は大学講師として少し働き、インターネット情報科の大学教授へ。

この時はちょうどインターネットバブルの時期だったため、インターネット情報科が学術機関でも増え始めていました。

世間が目まぐるしく動いていた時期でしたね。

そういえばこの時に、講師10人くらいの間で「事業を立ち上げられないか」という話があったんです。

オンラインゲームを手掛けるような会社を作れたらいいね、って。

この時、自分が手を挙げたことがきっかけに、開発会社を設立することになりました。

ちなみにですが、この会社は韓国国内で初めのMMORPGとして、「英雄門」を1997年にリリースしました。

出典:Hero Moon (online game)

とにかく当時から新しいことへ挑戦するのが好きでしたね。

また、他人がやる前にまず自分がやりたい、という思いがいつも強かったような気がします。

それが教授にとどまらないで、ビジネスを立ち上げることへ繋がったんだと思います。

 
 
ーインターネットが始まったばかりの当時は、テクノロジー新興企業として何か課題などはありましたか?
 

当時は「ネットワークの反応が遅い」という問題が特に顕著だったのを覚えています。

オンラインゲームでは、ネットワークの速さは必要不可欠。

しかし、ネットワークの問題は基本的にインフラ構築をできる人しか解決できないものであり、私たちがこれに関して能動的に何かできるというわけではありません。

また、既存インフラが不便ということは、全ての企業が苦労していたということ。

そのため、多くの企業のシステム開発を手伝うようになりました。

というのも、スタートアップとしてゲーム開発だけに専念できた訳ではもちろんなかった。

ゲームエンジン開発を続けたかったのはやまやまでしたが、収益性がなかったために事業へ投資してもらうことができない。

結果的に、大企業からシステム開発の受託することで収益を生み出していました。

しかし、実力だけでは他企業よりもあったため、委託業務は多くNTTドコモを始めとする大企業のシステム開発に携われましたよ。

例えば、LG電子からの受託案件で、電化製品の競売システムを韓国国内で一番最初に私たちが開発提供しました。

そういえば「データの重要性」について分かってきたのも大企業のためにシステム開発をするようになってからでしたね。

一つ例を挙げると、韓国でパンのフランチャイズを持つ会社のPOS(ポイント・オブ・セールス)を担当した時に、「どの地域でどんなパンが一番売れるのか」というマーケットデータを取り出せるシステムを開発したんです。

この時に、データがお金になるということに気が付きました。

というのも、データを本当に上手く活用すれば、費用を節約できるだけでなく、商品をたくさん売れる。

ある地域では20代女性が好んであるパンを買うという統計が出たとしますよね。

しかし、どんなパンでも在庫は残ってしまうもので、破棄しなければならないことも多い。

消費者がどのようなパンを好むかのデータがあれば、在庫が残りそうなものは少なめになど対策を打つことができます。

また、ここの地域である「味」が人気というトレンドが掴めたら、特定地域をターゲットにパンを製造することも可能。

例えば、マヨネーズ味やチーズ味が好きだなどの地域の趣味嗜好に合わせて新しいパンを商品として並べることもできますよね。

このように価値のあるデータは、「お金」へ変わります。

 
 
ーIT業界の経験が長いジンギルさんですが、仮想通貨をいつ頃耳にしたんですか?
 

サトシ・ナカモトが提唱した概念に似たようなものは、実は結構前から聞いていました。

そもそもデータを分散化させるような管理システムは、80年代くらいからあったものです。

私が初めて分散型システムについて知ったのは2000年頃で、C言語の本を出版したことでも有名な日本人の三田典玄さんから聞いたことがきっかけでした。

彼が韓国に来て言い放ったのは、「中央にあるデータベースが必要なくなる時代がこれから到来する」ということ。

各々がデータをやり取りするようになるよ、って言ってたんです。

具体的には、ショッピングモールにおけるPOSと消費者がデータを共有できるようなシステムについて話していました。

この時に、今のブロックチェーンの基本的な構造を彼から教わり、中央集権型の機関がデータを管理していなくとも各々のユーザーがそれを持っていれば、データを交換したり管理できる、ということが分かりました。

「中央に集める必要がないんだ!」ということに気付かされたのはこの時でしたね。

 
 
ー実際にビットコインを聞いたのはいつでしたか?
 

ビットコインを知ったきっかけは、オープンソースに興味があったため、色々とネット上で調べていたことがきっかけです。

ビットコインを知っている人は周りに誰もいなく、サイバーマネーに少し関心のある中学生が韓国電子掲示板サイトに数人いたくらいでしたね。(笑)

(*サイバーマネーとは、インタネット上の決済で使用される電子マネーのこと。)

要するに「アーリーアダプター」の中のアーリーアダプターという感じでしたね。

ちなみにですが、ビットコインの「ジェネシスブロック」生まれた後、一番最初にビットコインが移動するのも見ましたよ。

「とても面白そうだ!」と思い、自分でもすぐにマイニングを始めました。

また、三田典玄さんが言っていたことを思い出し、ビットコインの構造を知りたくて色々と調べたのを覚えています。

結果的にどう思ったかというと、スピードは除いて、ビットコインはブロックチェーンが金融システムの「革命」を起こすようなものだと感じましたね。

だから、マイニングもやりましたし、メッチャ掘りました。(笑)

どうにかしてオンラインゲームに使えないか、なんてことも考えていましたね。

また、当時はほとんどビットコインを知っている人がいないどころか、ちょっと聞いた人も何も信じませんでした。

本当に誰も何も信じなかったですね。

正直なところ、自分自身も最初はサイバーマネー技術に対する好奇心しかありませんでした。

 
 
ー実際にブロックチェーン企業をなぜ自分でも立ち上げようと思ったんですか?
 

2011年にブロックチェーン事業を本格的に始めようと思いました。

出典:Management Philosophy

きっかけは、BTC市場が上昇しており、世間が少しずつそれに気づき始めたからです。

その後物凄く下がりましたが。(笑)

ブロック報酬の「半減期」が重要な経済指標となりこれまで上がったり下がったりを繰り返しているように思えますね。

これは、140年間で2100万枚がマイニングされるように4年ごとに予めビットコインソフトウェアにプログラミングされているもので、BTCマイニングの報酬量が時間が経つにつれ減少していくようにできています。

つまり、市場へ出回るビットコインの枚数がこれまでよりも減り、ビットコインを欲しいという人の数が一定または増加する場合は、ビットコインの価値が上がります。

ちなみにですが、次にこれが起こるのは重要な年は「2020年」です。

 
 
ー当時の業界はどのようなことが話題にされていたのですか?
 

当時は、「スピード」をどうするかに関しての議論がよくされていたのを覚えています。

だから送金速度が速いライトコインが誕生しましたよね。

第一世代のブロックチェーンは、兎に角スピードに焦点を当てたものが多かったと言えます。

それから俗に言われるブロックチェーンの第二世代目が誕生しました。

イーサリアム創設者ビタリック・ブテリン氏が始めたような、従来のブロックチェーンとは異なるネットワーク技術です。

イメージ的には、これまでのブロックチェーンにスマートコントラクトを付け加えた感じ。

この時に、俗に言われるdApp(分散型アプリ)が誕生し、ICOも徐々に増え始めました。

「スマートコントラクト」と「ウォレット」の二つが生まれたことによって、様々なビジネスやプロジェクトが走り出し、ICOブームを触媒したと言えるでしょう。

ちなみにですが、ブロックチェーン のユースケース関して様々なアイデアが考案されていますが、現在ではAIやビッグデータとブロックチェーンの融合が一番注目されています。

そももそもAIには、ビッグデータが必要。

というのも、AIを学習させるにはデータは必要不可欠ですからね。

ブロックチェーン技術を使えば、中央集権型のサーバを使用せずにデータを大勢と分け合うことが可能になります。

特に、ハッキングなどの大きな課題があるIoTにおいて、データを分散させ、取引・共有したりすることには期待できますよ。

また、IoTの発展に拍車をかけるような「5G」という通信速度がもうすぐ到来すると言われていますよね。

そのため、IoTを早くブロックチェーンで管理できるような基盤を作れば、それを様々な産業で活かせるようになるでしょう。

 
 
ーブロックチェーン技術をこれから普及させていくには、何が必要だと思いますか?
 

まず言えることとしては、ネットワークの構造をしっかりと考えられているプロジェクトが意外と少ないということ。

ブロックチェーン技術を本格的に採用して、産業として成功しているところはありますか?

もちろん「ない」ですよね。

ハイパーレジャーもまだテスト的にしか使われていない場合が多いのが現状です。

そもそもブロックチェーンが重要な理由は、それが「ネットワークシステム」であること。

つまり、データを動かす「構造」と「ネットワーク」が重要です。

これらの今後の技術的進歩は、インターネットと比べると分かりやすいかもしれません。

インターネットが開発されている当時、速度を向上させるために様々なものが取り入れられましたよね。

具体的な例としては、Dot.net、java、flashなどが時間が経つにつれ開発されました。

また、インターネットが始まった時に、マイクロソフトやGoogleがメールサービスを初め、その数年後もっと革新的な技術が次々に登場しましたよね。

ブロックチェーン技術でも同じことで、インターネットの発展でメールサービスに値するものが、最近になりやっとブロックチェーン業界でも見られるようになった感じです。

そのため、ブロックチェーン技術が普及するには、次のキラーコンテンツが必要です。

また、ソフトウェアにはどうしても限界があるため、「ハードウェア」を進化させる必要も少なからず出てきます。

私たちが日常的に使用しているハードディスクが時代と共に小さくなったことと同じです。

ブロックチェーン技術自体の需要は、これから少しずつ増えてくると考えられます。

世界的な社会の動きを踏まえても、ブロックチェーン技術の必要性はかつてなく高まっていると言えるでしょう。

ヨーロッパでは、「MyData Movement (個人データ運動)」があるのを知っていますか。

これからは、個人データに関して政府がタッチできないような時代へと移り変わっていくと思います。

また、ポータルサイトをはじめとする中央集権型のサービスは、データの取り扱いに関して少し間違ったことをするだけで会社が潰れていくようになるかもしれません。

実際にも、多くの大企業は顧客の個人情報を流出しており、最近でも韓国企業の一つがデータ漏洩を理由に潰れています。

今あるデータベースのほとんどは「中央集権化されたもの」であることを、皆さんはもうご存知かもしれません。

ハッキング被害に遭いやすいようなクラウドサービスが一般的。

また、中央集権型企業によって管理される個人情報は、ハッキングされたからといい、誰かが責任を取ってくれる訳でもない。

しかし、残念ながらこれが現状です。

また、中央集権型のデータベースが使われていることが理由で、自分のデータが勝手に売られるようなことも多々ありますよね。

例えば、生命保険に加入するための情報を企業へ渡した時に、別の会社から電話がかかってくるなんてこともあったり。

このように、プライバシーに関する情報を保管するにおいて、中央集権型のデータベースは良くないと思います。

しかし、ブロックチェーンが採用され、分散型データベースが普及すれば、データ漏洩に関するリスクも分散されます。

ちなみに、データの中にも様々な種類がありますが、特に写真・動画はとても貴重なもの。

フェイスブックの場合は、データ所有権関係なく、アップロードした写真などは中央集権型のサーバーで保存されます。

それでどうなったかというと、フェイスブックは個人データを流出しましたよね。

出典:Damage Control at Facebook: 6 Takeaways From The Times’s Investigation

また、フェイスブックのようなテクジャイアントは、私たちが提供するデータを基にビジネスを成り立たせています。

言い換えると、私たちが提供するデータを基に大企業は莫大な富を築いているということ。

もちろん、情報の所有権が自分にあるのにも関わらず、私たちには見返りなんてありません。

TONGBLOCが考えるようなシステムなら、このような既存システムを根本的に変えることができます。

ユーザーは、より公平で優れたシステムを利用できるようになるでしょう。

 
 
ーTONGBLOCは実際にどのようなプラットフォームを構築しているのですか?
 

私たちが構築している「DTOP(data trading on demand)」というプラットフォームでは、言ってしまえばシェアリングエコノミーのデータ版を確立させようとしています。

DTOP公式ページ

一部の人々がデータを独占する大企業のようなモデルではなく、各個人が自分のデータをどうするか決めることができるようなプラットフォームです。

具体的には、DTOPプラットフォームが提供する「Data marketplace(データ市場)」へ販売したいデータを送り、好きなように取引できます。

これは、先ほどお話ししたグーグルやフェイスブックのような大企業のビジネスモデルとは違いますよね。

個人データを基に築かれる富が分配される方法が根本的に異なり、ユーザーは「個人データを自分で好きなように売却できる」というかつてないオプションが与えられるでしょう。

また、センサーやスマホなどから集められた個人データを販売するための、謂わばデータ収集の中心となる場所を、私たちは「Data Farm (データファーム)」と呼んでいます。

ちなみにですが、ここで活躍が期待される各々がデータを収集するための便利なデバイス「DonTong (ドン・トン)」は、私たちが用意します。

Donは「お金」という意味で、Tong は「通じ合う」や「箱」という意味。

つまり、貯金箱といったところですね。

基本的に、Don Tongは三種類のデータを持つことができます。

まず、今まで収集してきたデータ(History data)が1つ目。

次に、センサーを通して収集するリアルタイムデータ。

最後に、複数のデータを混ぜ合わせて作るPlanning data (計画したデータ)。

簡単に言ったら、「過去・現在・未来のデータ」という感じです。

例えば、天気に関するデータは「リアルタイムデータ」。

出典:DMP

より正確な気温に関する情報が必要な場合は、より多くのデバイスが各地に散らばっている必要がありますよね。

このような情報を集めるためのハードウェアを製造しているBloomskay (ブルームスカイ)という企業があるのですが、私たちのプラットフォームを使用すれば、多くの人がこの企業の製品を使って天気データ収集し、それを売却することが可能です。

実際にも、天気データを欲している企業は沢山ありますからね。

また、デバイス一つに対して一人分のIDしか繋がらないような仕組みです。

音声や画像などのデータだけでなく、センサーさえあれば「匂い」も保存できますよ。

 
 
ー何か最後に一言ありますか?
 


データはお金になりますが、お金をたくさん持っている人がそれをコントロールしてるのが今の現状です。

あるスタートアップがどんなに優秀なAI技術を持っていたとしても、十分なデータを得るチャンスがなければ話になりません。

私たちは、こういった新興企業や多くの消費者のためにも、データをやりとりできるプラットフォームを築き上げたいです。

つまり、新興企業でも大企業と同じチャンスを得られるようにしたい。

「共有する」や「分散する」という概念をベースに、フィンテックにおける革命を起こしたサトシ・ナカモトにも、このようなスピリットがあったと思います。

私たちは、「データ」におけるレボリューションを起こしたいと考えています。

  
以上、TONGBLOC代表取締役ジンギル・リー氏のインタビューでした!