G20によるグローバルな仮想通貨規制、IMFラガーテ氏「石橋を叩いて渡れ」


今月8・9日に福岡市で開催されたG20(主要20カ国・地域)の財務相・中央銀行総裁会議が共同声明を採択した。開会挨拶では、IMF専務理事クリスティン・ラガーデ氏が、経済包括・発展における「暗号資産」の可能性について言及した


 
 
 
 
境を持たない仮想通貨の「国際的な規制」は、シンプルなものではないだろう。

今月8・9日に福岡で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議で、米中貿易摩擦、国際租税、また「暗号資産」に関する方針が討論された。

国際的なマネロン対策に取り組む政府間組織「FATF(金融活動作業部会)」が今月中に発表する暗号資産に関するガイダンスに「期待する」という再確認が取られた同会議だが、以前FATFが提示した取引所規制に伴う「プライバシー保護の問題」に対する姿勢は不明なままだ。

 
 
規制された取引所への「煩わしい投資と摩擦」が懸念
 

閉幕後に公開された共同声明によると、G20は暗号資産の将来性を認知しながらも、現時点ではそれが既存金融システムの「脅威」だと見ていないという。

また、G20はFATFが今月中に採択される「仮想資産や関連業者」に関するガイダンスが提示する「基準を適用する」という規制方針を再確認できたようだ。

FATFがもうすぐ仕上げる予定の最終版ガイダンスは、必ずしも法的拘束力を持つわけではない。

が、36か国とEC(ヨーロッパ共同体)・GCC(湾岸協力会議)が加盟している政府間機関が提示する同ガイダンスは、サムスン社よりも市場規模が遥かに小さい仮想通貨エコシステムへ大きな影響を与えることが予想される。

特に注目すべきFATFのガイダンス内容としては、「Funds Travel Rule (資金トラベル規定)」が挙げられるだろう。

まず、今年5月9日に公開されたFinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)のCVC(交換可能な仮想通貨)に関するガイダンスには、次のように記載されていた。
 

Funds Travel Ruleの下では、3,000ドル以上(または仮想通貨でそれに相当するもの)の資金の送金において、送金人または受取人の金融機関・仲介金融機関としての役割を果たす送金業者に対して、一定の要件が生まれる。

 
具体的には、送金者・受取人の顧客情報を記録しておくことや顧客情報を送金サービスプロバイダ(また仮想通貨取引所)が資金を転送するときに互いに渡し合うことが要件に含まれる。

これは、FATFが今年2月に公開した物議を醸すような「解釈ノート」の内容と類似しており、最終版ではないことを強調しながらも、FATFは次のように述べていた。
 

各国は発信元VASP(仮想資産サービスプロバイダー)が要求される仮想資産譲渡に関する正確な発信元情報および受益者情報を確実に入手および保持し、その情報を受信者VASPに提出し、要求に応じては当局に提供すべき。

 

このように仮想通貨によるマネロン防止のアプローチにおいて、「プライバシー保護の問題」が懸念されるような従来の金融システムと同様な規制方針を提示したFATFに対して、以前ブロックチェーンリサーチ企業ChainAnalysisは以下のようなコメントをしている。

 

法執行機関にとって重要な見方である規制されたVASPに煩わしい投資と摩擦を強いると、(規制された取引所の)普及率が低下し、分散型およびP2P取引所の活動が促進される。

 
 
ラガーテ氏:「石橋を叩いて渡れ」
 
仮想通貨規制におけるプライバシー保護の重要性が業界人から指摘されている中、G20もこの問題を度外視しているわけではないようだ。

財務相・中央銀行総裁会議の開会挨拶で、かねてより仮想通貨に前向きな発言をしていることを知られるIMF専務理事ラガーデ氏は次のように述べた。
 

金融業界の混乱は、大きな顧客基盤と資金力を使ってビッグデータと人工知能に基づいた金融商品を提供するハイテク大手によってもたらされる可能性がある。この動きは、金融包括や金融市場の近代化を加速化する見込みを示唆する。しかし、プライバシーの問題に加えて、市場競争・集中の懸念があり、その両方が金融システムの脆弱性につながる可能性がある。

 
また、「暗号資産、銀行ではない金融仲介者、またデータ管理」における各国のアプローチを統合することが金融包括と発展において重要だと主張し、「金融の安定性と完全性を維持し、消費者を保護し、そして金融リテラシーを高める方法を見つけなければならない」とアピール。

そして、「石橋を叩いて渡る」という日本のことわざを引用し、フィンテックの未来へは「橋が安全であると確信できた後に進む」と述べ、スピーチを締めくくった。
 
 
今月中に一旦石橋を叩き終えるFATFが提供するガイダンスによって、顧客情報に関する取引所規制はどのように形作られるのだろうか。

インフラ上の様々な課題が考えられる中、これから世界中の規制された取引所は顧客情報を「共有&場合によっては規制当局へ報告」するようになるのだろうか。

厳しい規制を避けながら一か八かの海外進出で成功したバイナンスや米国の厳しい規制の下で石橋を叩きながら運営するGemni取引所の「国際的な規制」に対するリアクションにも注目だ。
 
 


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