コンサル大手: 大規模に展開される3つのブロックチェーンの使い道とは?


海外送金やID詐欺における問題を抱えるリテール銀行業務において、ブロックチェーンが「大規模に展開される可能性がある」ことをコンサル大手McKinseyが報告した。


 
 
 
 
業用ブロックチェーンが注目を浴びた2014年に「ビットコインではなく、ブロックチェーン」という言葉が使われ始めた。

それから早くも5年という月日が経った今、依然としてビットコインを超えるキラーアプリは登場していないものの、ブロックチェーン技術への関心はかつてない程高まっていると言える。

そんな中、リサーチ企業Gartnerとコンサルティング企業McKinseyが、それぞれブロックチェーン技術のユースケースや将来性に関する独自の見解を共有した。
 
 
チャンスあり、ビジネス価値は「3.1兆」ドルへ
 

Gartnerシニアリサーチディレクターであるエイドリアン・リー氏によると、多くの企業は「ブロックチェーンの機能と短期的なメリットを過大評価」しているという。

その理由として、ブロックチェーンプラットフォームの販売元は「ターゲット顧客のユースケースやビジネス上のメリットに結びつかない」ような宣伝をしていることを指摘したリー氏は、次のように続けた。
 

例えば、「トランザクション」はブロックチェーン関連で最もよく使用される用語で、その後に「安全性」と「セキュリティ」が続く。これらは、ブロックチェーンが提供する機能ではあるものの、これらの機能がどのように達成されたり、既存プロセスと比較してブロックチェーンがもたらす利点について購入者はまだ混乱している。

 
それでも、リー氏によるとブロックチェーンプラットフォームの新規ベンダーは今後も増え続けるという。
 

製品コンセプト、機能セット、コアアプリの要件、またターゲット市場について業界の標準がないため、今後5年以内に単一のブロックチェーンプラットフォームが優勢になるとは考えられない。その代わりに、複数のプラットフォームが出現するだろう。

 
また、Gartnerの予測によると、2025年までにブロックチェーンによって付加されるビジネス価値は約1,760億ドルまで増加し、その後2030年までに3.1兆ドルを超えることが期待できるそうだ。

しかし、2021年までに現在の企業用ブロックチェーンプラットフォームの実装の90%は、競争力と安全性を維持するために、新たなプラットフォームへ移行する必要になるという。
 
 
ブロックチェーン革命:リテール銀行編
 

Gartnerが指摘するように、ブロックチェーンを特徴付ける機能を反映したようなブロックチェーン技術実装の事例は多くなく、依然として同技術がもたらす「バリュー・プロポジション(価値提供)」が現時点で明確だとは言い難い。

が、コンサルティング企業McKinseyによると、リテール銀行におけるブロックチェーン技術のユースケースは「様々な分野で価値を生み出す可能性がある」という。

(*リテール銀行とは、大企業のような大口ではなく、中小企業・個人を対象とする取引を主に行う銀行のこと。)

具体的には、ブロックチェーンの主な強みの3つである「データ処理、非仲介、および信頼性」の観点から、3つのユースケースが「最終的には大規模に展開される可能性がある」そうだ。
 
 
1. 海外送金

市場規模がおよそ6,000億ドルだと推測されている国際送金市場だが、送金インフラは依然として「不格好、不透明、そして非常に仲介されている」ため、手数料の問題があるという。

それ故に、取引の透明性と不変性が向上出来るブロックチェーンは年間40億ドルのコストを削減できるそうだ。
 

ブロックチェーンは、非効率性を改善することで価値を生み出すことができるかもしれない。例えば、相手方が法定通貨ではなく暗号通貨(中央集権型の機関を必要としないデジタル通貨)を交換するのであれば、現在のシステムのように数日ではなく、ブロックチェーンを介すことで数分で行える。

 
しかし、これが大規模に普及するのには、ユーザーの匿名性に関する制限や現時点で従来のシステムでは「リアルタイム決済」が不可能なことなどの課題が幾つか挙げられるという。
 
 
2. KYC/ID詐欺防止

McKinseyの調査報告によると、銀行はID詐欺だけで毎年150〜200億ドルを失っているという。

しかし、ID詐欺に対抗するための手段の一つであるKYC関連の解決策は、実装までの時間とコストが掛かる。

そんな中、ブロックチェーン技術は実装までのプロセス全体を簡素化するだけでなく、KYCとAMLのコンプライアンスチェックの重複を排除することで情報処理の負担を軽減するという。

これにより、リテール銀行の運用コストが世界規模で最大10億ドルまで削減され、詐欺による年間損失は70億ドルから90億ドル程減少することが期待できるそうだ。

それでも、ブロックチェーン技術を実装するまでには、従来の銀行の気風とは異なる「データ共有の必要性」などの実用的・文化的な課題が挙げられるという。
 
 
3. 顧客データを用いたリスク評価

顧客の財務情報が十分でない従来のシステムをベースとする「リスクアセスメント」では、銀行は信用評価の際に保守的になる傾向にあるという。

McKinseyによると、全ての取引がブロックチェーン上で行われるようになれば、銀行はネットワーク内の他の銀行から共有されたデータも閲覧できるため、「より迅速な意思決定」や「より情報に基づいたクレジット配分」が可能になるだそうだ。

しかし、プライバシー保護が課題として挙げられ、これの実現を試みる金融機関には「困難が伴う」という。
 
 
著名コンサルが挙げたリテール銀行におけるブロックチェーン技術の有用性をアピールするためのユースケース全てに、顧客の「プライバシー保護」の課題が挙げられていることは興味深い。

本当にそれらが有用かどうかは時が経たないとわからないのかもしれないが、McKinseyが指摘したように顧客からの理解を得るには一苦労だろう。

ビットコインのような問題に対する解決策ではなく、問題を探している解決策になっているブロックチェーン技術だか、プライバシーに関する意識が世界的に変わりつつある中で今後どのような目的で使用されるのかに注目だ。

 
 


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