世界最大国際送金システム「SWIFT」の新ビジョン、 将来的には全ての取引が「数秒」へ


世界中の11,000行が加盟している国際送金ネットワークを展開する「SWIFT(国際銀行間通信協会)」が新たな国際決済のビジョンを公式サイトで発表した。


 
 
 
 
際送金に対する金融機関の認識の変革は、既に始まっている。

Visaがブロックチェーンを採用した金融機関向けのグローバルなB2B決済処理プラットフォーム「Visa B2B Connect」を展開したり、フェイスブックとそのパートナー企業が金融包摂を掲げる独自の決済インフラを発表した昨今、国際送金の常識は大きく変わり始めていると言えるだろう。

このような変化を察知しているのは大企業やフィンテック企業だけではなく、世界最大の国際送金インフラの築いたSWIFT(国際銀行間通信協会)もこの新たな国際送金のトレンドに敏感に反応し、技術革新を進めているようだ。
 
 
国内送金のように国際送金も可能になる!?
 

SWIFTの新たなビジョンは、「国境を越えた支払いを国内のものと同じくらい円滑かつ便利にすること」だという。

背景としては、一連のテクノロジーの発展が支払いビジネスに対する顧客からの需要に変化をもたらし、国内の銀行へ技術革新を促したことが挙げらえるようだ。

具体的には、国内決済がリアルタイムになったり、中央銀行システムが24時間365日稼働する(=RTGSシステムの出現)のが当たり前となるなど、銀行が競争力を維持するためにはテクノロジーへ順応する必要性が生まれたという。

一方、従来のインフラを介した国際送金は、誰もが取引の全てを確認できるような透明性の高い仮想通貨とは異なり、これまで謎に包まれていた。

また、送金状況、納期、および支払いの最終金額に関する情報を見積もることが困難だったり、送金手続きやアクシデントの際の処理などは全て手動。

そのため、「国際送金」という専門分野でも、国内の銀行サービスと同様な技術革新が強いられているという。

 
 
SWIFTが目指す国際送金2.0
 

11,000行の顧客を抱えるSWIFTは、2017年に「gpi(グローバル決済イノベーション)」という既存インフラの現代化に向けた標準の導入を開始した。

既にSWIFTネットワーク上の55%の送金はgpiによるもので、その半分は数分以内、また実質的に全ての送金は1日以内に受取人へ到達しているようだ。

次のマイルストーンとしては、2年以内に国境を越えた支払いの全てをgpi標準にするという。

そんな従来の国際送金インフラにおける技術革新の原動力となっているgpiには、重要な柱が3つある。

まず、「humble tag (ハンブルタグ)」と呼ばれる、送金者、コルレス銀行、受取人までを追跡するために全ての支払い情報に付随される「取引識別子」。

次に、これらの支払いを追跡し、要求に応じて状態を報告するための「トラッカー(追跡機能)」。

そして、顧客の注文から受取人までの追跡が可能になったことにより実現した、送金完了までの「時間枠」を閲覧可能にする機能がSWIFTシステムを効率化するという。

SWIFTによるとgpiは既に「転換点」を過ぎており、将来的には「全ての取引が数秒」で行われるようになるそうだ。
 
 
リップル Vs. SWIFT
 
今回のSWIFT社の発表は、打倒SWIFTを掲げるリップルが送金サービス大手MoneyGramと新たな契約を結んでから数日後に報告された。

リップルは仮想通貨「XRP」を採用することで、既にSWIFTが目指すリアルタイム決済(~4秒)を実現している。

リップルとSWIFTの技術革新の違いについて、元SWIFTディレクター且つ現リップル営業ディレクターのマリユワン・デラティネ氏は、以前次のように述べていた。
 

SWIFT gpiは、銀行が利用している既存インフラの改善を目指している一方、リップル社は全く新しい変革的な解決策を提供している。 これは、これまでなかったような、より良いユーザー経験を銀行が提供できることを実現している。 リップル社の目標は、銀行の成功を支援することであり、SWIFTは銀行によって所有された組織だ。 そのため、私はリップル社がSWIFTと競合するとは思わない。

 
また、海外送金の効率化を異なる方法で図るこれら2社のCEO(SWIFT:ゴットフリード・ライブラント氏とリップル:ブラッド・ガーリングハウス氏)らは、以前パリス・フィンテックフォーラム2019で議論を交わしている。

SWIFT代表取締役はブロックチェーン業界を牽引する重鎮の一人であるガーリングハウス氏に対して、ブロックチェーン技術について次のように述べた。
 

私たちはブロックチェーンとAPIに関して長い議論をしてきた…ブロックチェーンを使った複数回に渡る大型の概念実証を実施した。その内の1つは、ノストロ・ボストロアカウントに関するもので、40行が参加した。IBMを除く過去最大のHyperLedgerの実装だったが、概念実証として機能はしたものの、移行コストを踏まえた上で既存システムより遥かに良いかは明らかにならなかった。ブロックチェーンを使用するよりも、現在GPIを使用しているAPIを利用して統合した方がはるかに簡単であることもわかった。

 

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それでも、SWIFTは同技術を見限っているわけではなく、金融機関向けブロックチェーンを提供するR3とパートナー提携し、ブロックチェーンをgpiに取り入れるためのテストを行っているという。
 
 
海外送金が国内送金と同様な効率性を持つようになるにつれ、インターネットによって情報の発信における「国境」がはっきりしなくなったように、「国際送金」という概念そのものが疑問視されるようになるかもしれない。

また、P2P取引がブロックチェーン技術の出現によって現実となった今、仲介者への信頼を必要とする国際送金インフラが現在のような重要性を失うことも十分に考えられるだろう。

フェイテック業界の技術革新をリードする仮想通貨業界と、新たなテクノロジーを取り入れようとする従来の金融業界のこれからの衝突や相互作用に注目だ。
 


 
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