金融的なヘゲモニーに対抗、バイナンス取引所が手掛ける「Venus」の力強いビジョンとは?


仮想通貨取引量で世界No.1のバイナンス取引所が、「政府や企業」を巻き込む世界規模で展開されるプロジェクト「Venus」を始動することを今月20日に公式サイトで発表した。


 
 
 
 
テーブルコイン市場に新たなダークホースが誕生する。

グローバル規模で展開される価値が安定した通貨を発行するデジタル通貨プロジェクト「Venus (ビーナス)」をバイナンス取引所が発表した。
 
 
バイナンスも世界通貨発行へ乗り出す
 
今回バイナンスが発表したプロジェクトは、フェイスブック主導のリブラに類似した点が多数見られる。

JPモルガンが手掛けるようなJPMコインとは異なり、「オープン」なプロジェクトであるVenusは、世界中の法定通貨とデジタル資産によって価値が担保されたステーブルコインを開発する取り組みだという。

先進的な仮想通貨の規制枠組みを既に築いているマルタ島を拠点とする同取引所は、既存のインフラやこれまでの規制面の努力における経験を活用し、Venusプロジェクトが必要とする技術支援、コンプライアンスにおけるリスク管理システム、またVenusを構築するために必要な取引所のネットワークを提供するそうだ。

バイナンスは仮想通貨業界で非常に知名度が高いだけでなく、既に通貨発行における技術的なノウハウがある。

バイナンスは独自ブロックチェーン「Binance Chain」のメインネットを今年4月から展開しており、ビットコインや英ポンドに価値が担保された幾つかのステーブルコインを発行済みだ。

実際にVenusがどのブロックチェーンネットワークを採用するかは現時点では不明なものの、公式発表には次のように述べられていた。
 

バイナンスは新しいステーブルコインの安全な運用のために、既存の国際的なブロックチェーンエコシステムから、パブリックチェーン技術と国際送金システムを確保した。

 
さらに、バイナンス取引所のCEOチャンペン・ツァオ氏は「詳細は追って発表する」とツイートし、「もちろん私たちはBinance Chainを一番よく知っている」と言い添えた。

尚、バイナンスはVenusの先進国および発展途上国における普及において「政府、企業、テック企業、および大規模なブロックチェーンエコシステムに関係する仮想通貨企業やプロジェクト」と協力するそうだ。
 
 
Venusの中国版アナウンスメント
 
最初に英語で公式発表があるケースが多いバイナンスだが、Primitive Ventures共同創設者であるドーベイ・ワン氏によると、中国語のVenusアナウンスメントはよりプロジェクトの内容が詳述されていたものだったようだ。

BTCエコシステムに精通しているワン氏はツイートストームで次のように述べた。
 

1.中国語版の序文は非常に強力で、「金融的ヘゲモニー(覇権)」、「強者は強くなり、弱者は弱くなる」などの文言があった。

2. 2番目のパートは「なぜバイナンスか?」について…

(*このセクションでは、前述の内容以外にもバイナンス取引所のマルタ、米国、アフリカ諸国またシンガポールにおける活動が言及されていた。)

3. 中国版アナウンスメントの残りは完全に独自の物語を展開している。再び金融ヘゲモニーを強調し、「金融覇権を破り、世界の金融システムを再構築するのがバイナンスの夢」と述べた。

4.最後の部分は最も興味深い部分だ。 基本的に、バイナンス取引所は「規制に関するアドバイス」を作成している。私の見解ではこれはバイナンス取引所が中国の規制機関に送りたい非常に大胆なメッセージだ。

 

また、ワン氏は今回の中国語の発表は、かねてより仮想通貨に批判的な中国政府に対するメッセージだと他のツイートで再度強調した。

厳密には中国政府が名指しされていたわけではないが、バイナンスは中央政府に対して次のように勧告している。
 

まず、中央政府が将来の金融システムにおいてブロックチェーン業界とステーブルコインのコア戦略と地位を確立することを推奨する。

第二に、一定の範囲内で規制サンドボックスを確立し、ステーブルコインに基づいて支払い決済サービスを試験的に行うことをお勧めする。

第三に、民間企業がステーブルコインを発行し、国境を越えた決済システムを開発できるようにすることをお勧めする。

 
 
通貨が自由市場で競合する時代に突入?
 
ノーベル経済学賞受賞経済学者フリードリヒ・ハイエク氏は、国家通貨と競合するような民間企業によって発行される「価値が安定した通貨」の登場について1970年代から説いていた。

このような見解は多くの業界人によって共有されており、バイナンス取引所CEOのツァオ氏もその一人であると言えるだろう。

バイナンス取引所が手掛けるVenusがフェイスブックが手掛けるリブラコインと競合するだけでなく、「世界を支配する」とツイートしたTwitterユーザーに対して、ツァオ氏は次のようにコメントした。
 

普及を促進しているか?イエスだ。支配する?ノー。共存することは常にハッピー(前向き)だ。ちょっと考えてみればこれはリブラの助けになるはず。

 

具体的にVenusがどのようにリブラの「助け」になるかツァオ氏は言及しなかったものの、他のツイートで自由市場における多数のコインの競争について言及し、誰でも「自由にトークンを発行」できることや「好きではないトークンを購入/使用する必要はない」と発言していた。

今後も続々と誕生するであろう中央銀行や企業によって手掛けられるより性能性が高い新たなステーブルコインの登場やその普及プロセスに注目だ。
 
 


 
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