IBMリサーチ結果、中央銀行は「デジタル通貨発行」に前向き

ドイツ連邦銀行を始め、多くの中央銀行がブロックチェーン技術を基盤とするシステム開発に出精する今日、国家主体で発行するデジタル通貨に関するトピックが関心を集めている。

IBMが公開した調査報告によると、数多くの中央銀行は「デジタル通貨を発行すべき」と考えている一方、ブロックチェーン技術を採用することによって期待できる費用対効果は「判然としない」と見ているようだ。

ビットコインを代替する?中央銀行発の仮想通貨誕生か

「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」やそれを採用することで可能となるビジネスユースケースについて説明することを目的とした今回の調査は、IBMとOMFIFによって中央銀行21行を対象に行われた。

その結果によると、中央銀行の多くはCBDCを「発行するべき」という見解を持っているという。

法定通貨によって価値が裏打ちされるデジタル通貨を発行することで「トークン価値の安定性を確保する」ことができるそうだ。

これに関して、報告書では以下のように述べられた。

ビットコインは、普遍的に受け入れられている決済方法ではないため、「価値の交換」という通貨の条件を満たしていない。価格変動が激しい投機的な製品として扱われることによって、仮想通貨の利便性はさらに減少する。CBDCは、この問題を解決できる可能性がある。

また、中央銀行21行の内、その38%がブロックチェーン技術を使った銀行間の取引におけるテストを現在実施しているという。

しかし、その61%は、効率性の向上が確認できないことを理由に、同技術は「必要ないかもしれない」と回答しており、また76%は、規制などを考慮した上で分散型台帳技術が効果を発揮できるかが「判然としない」という見解を明かしたそうだ。

中央銀行、既存の金融システムに「満足している」?

同報告書には、国境を越える取引におけるDLT(分散型台帳技術)の活用を試みるプロジェクトを含める、分散型技術の可能性を模索したいくつかのユースケースが詳述されていた。

しかし、現在試行されているこれらのビジネスユースケースは、現存する決済システムを近い将来に「置き換えることはない」とのこと。

また、中央銀行の多くは既存のシステム「満足している」と、報告書には述べられていた。

従来の金融機関によってブロックチェーン技術の取り組みが本格化する中、まだまだそれは初期段階といえるようだ。

原典:Most Central Banks Back Digital Currency If DLT Improved: IBM Survey

ここまでの内容と考察

デジタル通貨の発行に前向きな半面、中央銀行はその費用対効果に対して現段階ではあまり期待していないという調査結果をIBMが報告したという、今回のニュース。

金融機関を必要としない「価値の交換」を実現させたビットコインの基盤となるブロックチェーン技術ですが、中央銀行がそれを応用するには様々な課題があるようですね。

また、スウェーデンのように、中央銀行がデジタル通貨を発行するというケースもあるようですが、「分散型技術」を採用してそれを行おうとする中央銀行は未だ存在しないようです。

ちなみにですが、IBMブロックチェーン技術部門バイスプレジデントであるJesse Lund (ジェシー・ルンド)氏は、同報告書で以下のようにコメントしています。

「ビットコインの背後にある社会運動は、世界的に行われる安全な送金に銀行が必要なくなったという誤った考えを広めている」


出展:Central bank digital currencies

もちろんこのコメントは、「誰」が「どのような目的」で送金を行うかについて言及していませんが、果たして同氏の見解は正しいのでしょうか。

ビットコインでなくとも、仮想通貨を使った海外送金におけるユースケースは、既存のシステムよりもはるかに便利なことを否定するのは、なかなか難しいようにも思えます。

今後も従来の金融機関のデジタル通貨の取り組みを追いながら、ビットコインを始めとする非中央集権型の「通貨」に注目していきたいですね!