SWARM 創設者が語る「証券がトークン化する新時代の幕開け」
- 2018/6/11
- 独占インタビュー

Swarm創設者として知られているTimo Lehes(ティモ・リーズ)氏に仮想通貨ニュース.comが独占インタビューしました!
従来の金融の仕組みをもっと改善できることを証明した仮想通貨。
そんな仮想通貨によって、また世の中が大きく変わろうとしています。
去年から流行し、今年上半期も熱の冷めないイニシャル・コイン・オファリング(ICO)ですが、次の仮想通貨業界の波は「セキュリティトークン・オファリング(STO)」と言われています。
STOとは、企業が証券をトークン化して投資家を募るというもの。
これは、「Polymath(ポリマス)」プロジェクトが考案した斬新なブロックチェーン技術の使い道です。
証券がトークン化されたものは、「セキュリティトークン」と呼ばれ、その将来性や規制について現在世界中から大きな注目を浴びています。
そこで今回編集部は、そんなセキュリティトークンを発行するプラットフォームであるSwarm(スワーム)創設者であるTimo Lehes(ティモ・リーズ)氏に独占インタビュー!
Swarmプラットフォームでは、企業がセキュリティトークンを発行でき、「Swarmトークン」を使って取引ができます。
そんなプライベート・エクイティ(未上場企業の株式への投資)の民主化を目指すSwarm創設者のLehes氏から聞いた、証券がトークン化される新しい時代の始まり。
ありのままお届けします!
―Timoさんは、仮想通貨業界に参入する以前にどのようなことをなされていたんですか?
私は「テクノロジー」と「金融」の2つの業界で長い経験があります。
若い時からプログラミングを始め、ビジネス用のソフトウェアを作ったり、エンジニアとして起業。
その後、投資に興味を持ち、ベンチャーの投資ファンドを北欧で経営を始めました。
また、ロンドンでも資産運用やプライベート・エクイティ(未上場企業の株式への投資)を3年くらいしたこともあります。
そんな中、アメリカのサンフランシスコに移った時に、フィンテックの企業への投資にとても興味を持つようになりました。
例えば、世界中の企業のプライベート・エクイティを扱うBanker Bay(バンカー・ベイ)へ投資しました。
そんなことをしている中、私の友達でSwarmの共同創設者のPhilipp Pieper(フィリップ・パイパー)氏からブロックチェーン技術を使った、証券を発行するアプリケーションの話があったんです。
このアプリを使って、どうやったらより多くの人々が敷居の高いプライベート・エクイティやヘッジファンドに簡単に手を出せるようになるかを考えました。
仮想通貨やブロックチェーンを使ってこれらを「Democratize(民主化)」し、価値のある企業に誰もが投資できるようにと。
それがPhilippと私のプロジェクトである「Swarm」です。
―現在のプライベート・エクイティの問題とは具体的にどのようなことですか?
プライベート・エクイティの問題は、「一般の投資家にとって公平でない」ことです。
最低でも10億円以上の資産がないとプライベートバンキング(富裕層へ金融サービス)に手を出せず、投資に関する有力な情報すら貰えません。
公開株を買っても、元手が少なければリターンは少ない。
つまり、資産がなければハイリターンを得られる投資が一般の投資家には不可能ということ。
例え約5億円の資産があっても、本当に価値があり、ハイリターンが期待できる企業への投資はできません。
このような不公平な仕組みは、変化する必要があると私は思います。
そのきっかけになるのが、「仮想通貨」と「ブロックチェーン技術」。
仮想通貨は「通貨」と考えられることが多いですが、証券などのアセットをトークン化することもできるんです。
これをすることによって、資産の少ない投資家でも効果的に投資できるようになります。
今まで「Big Gun(富裕層)」しか得られなかったようなハイリターンのチャンスを、より多くの人が得ることが出来るようになるでしょう。
つまり、プライベート・エクイティを民主化させるということ。
ちなみに、Swarmは非営利法人なので、投資家が得るリターンの一部を取るなんてことはしません。
このように、Swarmは人々が投資において「Big Gun」と同じような機会を与えられていないという大きな問題を解決しようとしています。
―ベンチャーキャピタルを民主化させることで注目を浴びたイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を最初に聞いた時はどう思いましたか?
私はベンチャーキャピタリストでもありますので、とても面白いアイデアだなと思いました。
機関投資家だけではなく、一般の人も参加するというとても斬新な投資の仕組みですよね。
ちなみにICOが最初に始まった時はまだ普及していない資金調達方法だったので、あまり注目を集めていませんでした。
しかし、去年に大きなブームがありましたよね。
現在でも、ICOに流れる金額を見ても、今後の企業が資金調達をする方法が大きく変化するのではないかと思えます。
特にテクノロジー企業への影響はとても大きいのではないでしょうか。
しかし注意したいのが、全てのICOプロジェクトが「トークンを発行する必要がない」ということ。
最近私は、
「なんでこのプロジェクトはICOでトークンを販売しているの?」
なんてよく思うことがあります。
簡単に資金調達のためだけにICOを行うプロジェクトが多いので注意が必要です。
このようなことがあるため、ICOは完璧な資金調達方法とは言い難いですが、従来の仕組みに挑むような新しい資金調達方法はいいことだと思います。
ICOは、今後も偏りすぎた資本市場へいい変化をもたらすでしょう。
―トークンが必要ないプロジェクトとは、どんなプロジェクトなのですか?
トークンが製品と全く関係ないようなトークンには問題がありますね。
例えば、Ripple社が奨励する「XRP」。
Ripple社が成功する一つの要因として、XRPが必要なRipple社の製品を多くの銀行が使用するということがあります。
ここでの問題は、XRPがどこまでに製品に関係しているかということ。
もしRipple社の分散型台帳だけを銀行が採用し、XRPを使用しない場合、XRPで資金調達する意味がわかりません。
このように、XRPはトークンと製品の関係性が少ない仮想通貨の代表的な例です。
最近話題になったXRPがセキュリティトークン(証券のような扱いとされるトークン)ということについてはどう思われますか?
アメリカで話題になっているやつですね。(笑)
現在の仮想通貨業界では、特定のトークンやコインがセキュリティトークンかそうでないかの違いが曖昧です。
もし米取引所がセキュリティトークンを扱いたくない場合、「ビットコイン」、「ライトコイン」、「ビットコインキャッシュ」だけを扱います。
また、「イーサリアム」と「イーサリアムクラシック」もギリギリセーフです。
他のコインやトークンは全てセキュリティトークンの扱いになるかどうかは言えません。
規制に基づいてセキュリティトークンを発行しない場合、トークンやコインは取り扱い停止となることが多いです。
XRPのような有名なトークンでも、セキュリティトークンと見なされた場合は上場廃止になる可能性もあります。
―そもそもSwarmが発行するセキュリティトークンとはXRPなどと違うんですか?
Swarmで発行するセキュリティトークンはXRPなどコインやトークンとは異なります。
Swarmでは、明確に従来の株式などの証券をトークン化します。
他のICOプロジェクトのように、そこを曖昧にしていません。
そのため、Swarmで発行するセキュリティートークンの全ては、証券における規制に厳格に従っています。
これを分かりやすく理解するためにも、まず一般的なICOトークンから説明しますね。
イーサリアムなどのプラットフォームで発行されるICOトークンは、「ユーティリティトークン」である必要があります。
ユーティリティトークンとは、プラットフォームを使うためのクーポンのようなトークンのこと。
そのため、株式とは異なります。
全てのICOプロジェクトはトークンがユーティリティトークンであることを明確にしなければなりません。
昨年、米国証券取引委員会(SEC)がICOのトークンに目をつけ、
「ICO市場にお金が流れ込み過ぎている。もしかしたらその中にはセキュリティトークンがあるかもしれない」
ということで調査をはじめました。
トークンがセキュリティかどうかということで重要なのが、どのように保有されていて、どのように使われるかということ。
アメリカでは、もしプロジェクトが「価格が上昇するよ!」という理由だけでトークンを販売した場合、そのトークンはセキュリティトークンと見なされます。
また、製品が完成していないプラットフォームで使用されるユーティリティトークンもアメリカではセキュリティトークンと見なされます。
ほとんどのICOには製品なんてありませんよね。
トークン販売は製品が完成する前に行われていることがほとんど。
そのため、SECが厳しく規制するので、アメリカ人の多くはICOに参加できません。
私自身、将来性のあるプロジェクトに投資したいといつも思っていますが、アメリカ人なので投資できません。(苦笑)
最近はとてもいいICOばかりなのでとってももったいないです。
また、SECはセキュリティトークン関連で仮想通貨取引所の規制も進めていますね。
例えば、BittrexやPoloniexに、
「もしセキュリティトークンを扱っていたら、金融商品取引業のためのライセンスを取るか、セキュリティトークンの上場廃止をするか選びなさい」
と警告しました。
しかし、このようにアメリカが積極的に規制をする理由は、もちろん問題視できるプロジェクトが多いということもありますが、それよりもSwarmのように証券をトークン化するプロジェクトが増えてきたからです。
最近では、不動産や株式をトークン化し、セキュリティトークンを発行するプロジェクトが多くありますよね。
アメリカではセキュリティトークンが普及するのに少し時間がかかりそうですが、カナダやヨーロッパの国々はICOにも積極的で、セキュリティトークンへの対応もとても早いように感じられます。
これは従来の証券の仕組みを大きく変化させるでしょう。
―セキュリティトークンは今後どのように仮想通貨業界に影響するでしょうか?
まず言いたいのが、セキュリティトークンはICOよりも革新的でないということ。
あくまでも従来の証券をトークン化するだけのものです。
しかし、世界中の多くの企業がセキュリティトークンのインフラを整えているため、今年中にはその取引の始まると思います。
これは仮想通貨業界に新たな風を吹き込むでしょう。
その理由は、単純に仮想通貨業界で投資家の数が増加するからです。
テクノロジーがわからない投資家は、よく詳細が理解できないICOトークンを買いたがりません。
規制もはっきりしていないICOが、彼らにとって敷居が高いのは理解できます。
しかし、プライベート・エクイティやプライベート・バンキングを知っている投資家にとって、セキュリティトークンはとても理解しやすい。
「トークンで証券を簡単に買えるよ!」
と言えば誰でも簡単理解できます。
そのため、私がSwarmについて話すと、多くの投資家に喜ばれます。
このような投資家たちがセキュリティトークンを買うために仮想通貨業界に参入するでしょう。
―それではSwarmプロジェクトについて教えてください!
Swarmでは、ファンドマネジャーが証券をトークン化できるプラットフォーム。
このプラットフォームでセキュリティトークンのやり取りをすることが可能です。
Swarmプロジェクトは、KYCなどを徹底し、誰がセキュリティトークンを買うことができるかということをチェックします。
またSwarmでは2種類のトークンを発行しており、各組織が発行する「セキュリティトークン」とユーティリティトークンである「Swarmトークン」の2つです。
セキュリティトークンは、先ほど説明したように、証券をトークン化したもの。
一方、Swarmトークンはプラットフォームの全ての取引に使用されるトークンです。
そのため、ファンドマネジャーと投資家はセキュリティトークン関連の取引をするために、Swarmトークンを購入する必要があります。
また、Swarmトークンを保有していると、プラットフォームに関係する意思決定において「投票」することができます。
もし世界中の何千人もの人が金銭に関わる意思決定をする場合、何らかのプロセスが必要ですね。
セキュリティトークンを購入するためのユーティリティトークンである「SWARMトークン」の保有者には、投票権が与えられます。
そのため、投資家はSwarmトークンと特定の企業などが発行するセキュリティトークンのどちらも保有することになります。
このようにSwarmは、新しいトークンの仕組みを採用することでファンドマネジャーと投資家を繋げています。
―Swarmと類似したプロジェクトの違いはありますか?
私たちは非営利団体です。
これは他のセキュリティートークンを発行するプロジェクトとの大きな違い。
他のプロジェクトは投資銀行のようなものが多いです。
例えば、Securitize(セキュリタイズ)。
企業がセキュリティートークンを発行する際に、その一部を貰い収益をあげます。
そのため、Swarmの哲学は他のプロジェクトと根本的に異なります。
また、Swarmは、プロジェクトが出来るだけ多くの収益をあげることが目的ではなく、コミュニティによって形成される民主化されたプラットフォーム。
一部の人間だけでなく、トークン保有者がプラットフォームの方針を決めます。
そのため、Swarm財団はプラットフォームの重要な方針を全てをコントロールしません。
言い換えると、一部の人間ではなく、トークン保有者が権力を持っているということ。
そのため、中央集権型ではない「DAO(分散型組織)」を形成しています。
要するに、Swarmは「証券を扱うイーサリアム」みたいなもの。
イーサリアムは分散化された非営利組織ですよね。
イーサリアムは非営利団体で、イーサリアムプラットフォームでdApp(分散型アプリ)を開発することが可能です。
そのために必要となるのが「イーサ」となります。
「イーサ」がプラットフォームを使用するための「ガス」と言われるのもこれが理由です。
Swarmもイーサリアムに似ています。
SwarmもSwarmトークンを中心にして、イーサリアムのような新しいトークン経済を形成しています。
dAppの代わりに、セキュリティトークンを発行し、Swarmトークンは言わば「ガス」です。
―今年の目標を教えて下さい
近い目標としては、セキュリティトークンを保有する100,000人の投資家を集めることと、それよりもはるかに多い数のSwarmトークンの保有者を集めることです。
現在60ヶ国以上から約28,000人の投資家がこのプラットフォームに既に登録しています。
これからの題は規制が様々な世界中の国でサービスを展開することです。
ちなみに、日本でも展開することを予定していますよ!
いかがだったでしょうか?
セキュリティトークンという仮想通貨業界に新しい風を吹き込むSwarmプロジェクトにこれからも期待したいですね!