eMusicのCEOが語る「ブロックチェーンが実現する音楽業界の近未来」

eMusic(イーミュージック) CEOであるTamir Koch (タミア・コック) 氏に仮想通貨ニュース.comが独占インタビュー!
 

4700万人以上のユーザーが支持されている、超人気のサービス。

ICO規制を強化しているSEC(米国証券取引委員会)ですら、ユーティリティトークンを発行する企業として世界で初めて承認するような、本物のビジネス。

そんな単なるスタートアップではなく、20年以上に渡って築き上げられた企業が、ついにブロックチェーン業界に参入する。

iTunesが誕生する5年前の1998年に設立した、eMusic (イーミュージック)。

自社の音楽配信サービスをトークン化するだけではなく、ブロックチェーン技術を駆使して音楽業界全体のインフラを抜本的に改善する、という大きな目標に向けて本格始動しているという。

そんなeMusicのCEOであるTamir Koch (タミア・コック) 氏に、仮想通貨ニュース.com編集部がインタビュー!

 
引用:eMusic、ヒップホップ音楽関係者のための「A3Cカンファレンス」に登壇決定!
 

コック氏は長年の経験がある連続企業家。

消費者の生活に直接に影響を与えられるようなサービスを提供することが、「何よりも好き」だという。

そんなコック氏が編集部に語った、ICOにおける本来のユーティリティトークンのあり方。

eMusicのトークンによって初めて可能となる「壊れた音楽業界」の大改革。

世界中で大勢のユーザーが毎日使用するような人気サービスを提供する企業による一流ICOについて、ありのままお届けする。
 

 
 

ーこれまでどのようなキャリアを積まれてきたのですか?
 
連続企業家として、23年間以上様々な経験を積んできました。

例えば、最初に創業した企業IPTV(インターネット・プロトコール・テレビジョン)は、時代を先駆けるようなインターネット関連の会社。

それを売却した直後の2000年にTONY(トー二ー)という広告関連の会社を創設し、2011年にそれを売却しました。

その後、クラウドサービスに特化したTryPlay(トライ・プレイ)という三つ目の企業を2005年に立ち上げ、eMusicを3年前に買収。

これらの企業全ては、現在でも需要のある確立したビジネスです。

このことに関しては、我ながらちょっと喜びを感じています。

本物のビジネスを生み出すことが何よりも誇らしいと感じますし、また多くのユーザーへ直接関われるようなサービスが好きです。

消費者向けのサービスであるトライプレイは、私にとって初めてのB2Cのビジネスで、人々の生活にインパクトを与えられていることに大きなプライドを持っています。

そんな中、1998年に誕生した世界初オンラインミュージックストアであるeMusicを3年前に購入し、トライプレイのクラウドシステムと統合しました。

これは、言ってしまえば「Winning combination(勝ちコンビ)」。

音楽を単に買うだけだったeMusicの「ミュージックストア」から、音楽を実際に聞いて楽しめるような「ミュージックサービスプラットフォーム」へ進化させました。

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それというのも、従来のシステムではeMusicプラットフォームで曲を購入できるものの、実際にそれを聞くには他のプラットフォームへ移動しなければなりませんでした。

これは少しめんどくさいですよね。

しかし、トライ・プレイのクラウドを導入したことで、同じプラットフォーム上で音楽をより簡単に楽しめるようになりました。

また、どのデバイスからもeMusic上の自分の音楽へアクセスすることを可能に。

アップル社のiTunes (アイ・チューンズ)に少し似ているように思えかもしれませんが、アップル製品とは異なり、スマートテレビやアンドロイドなど様々なデバイスでサービスを利用できます。

 
ー長いビジネス経験の中で、「起業家」としてはどのようなことを学びましたか? 

「人生がベストな大学だ」という言葉を聞いたことがありますか?

実際に自分の人生で行動を起こすことで、様々なことを学べると個人的に信じています。

今までの経験で一番大切だと思ったことは、ズバリ「最高のチーム」を作ること。

これに関してはとにかく重要だと言い切れますよ。

また、自分の欠点を知るということも大事だと思っています。

「鎖の頑強さは、一番脆い輪で決まる」なんて言葉もありますが、正にこれが当てはまるでしょう。

例えば、私は人を選ぶのがとても苦手。

そのため、まず人をしっかりと見分けれるような面接を上手くできるような人を探します。

思っている以上にこれは重要なことで、どのチームでもベストな人材を確保したいですよね。

面接は他の人の力を借り、私は得意な人事評価を行います。

特に新しい人材が入社した3ヵ月後の従業員の評価は、非常に大事。

この時に従業員に対して誠実になれば、彼ら彼女らも忠実になってくれるんです。

このように自分の強みだけに集中するべきではなく、弱点を認め、それを補うことにも心掛けるべき。

弱みを知ることは、自分の強みへ繋がります。

そのため、私は常にチームの最重要視しますね。

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自分の足りないところを認め、それをしっかりカバーできるような人とつながり、周りの環境を良くすることはとても重要です。

eMusicプラットフォームがこれほどまでに成長できたのもチームのおかげ。

自社製品にそれがよく表れていると感じています。

 
ー仮想通貨にはいつ興味を持ち始めたのですか?
 
テクノロジーに関してはいつも興味があったので、早い時期からビットコインやイーサリアムについて知っていましたが、「ICO (イニシャル・コイン・オファリング)」という言葉は、昨年初めて耳にしました。

その内容を理解した時には、すぐに好きになりましたね。

なぜなら、コミュニティが参加できるから。

ビジネスにおいて、常に「一般大衆」の判断が正しいと私は個人的に信じています。

株式市場でマーケットが上下する理由は、大衆がベストを知っているから。

そのため、ICOは単なる資金調達でなく、大衆がプロジェクトに関われるようなこれまでにないものだったので、素晴らしいと思いました。

また、投資家という観点からも、ICOは本質的にとてもいいですよね。

例えば、投資家が新興企業へ投資するとします。

その場合、投資家はいつも受け身。

というのも、出資した企業がプロジェクトを遂行している間は、それが結果的にどうなるかに関わらず、何もできません。

プライベートエクイティに流動性はほとんどなく、資金回収するまで長期間待つ必要があります。

(*プライベートエクイティとは、未上場企業の株式のこと。)

しかし、サービスが確立した企業が行うICOではこれが大きく異なります。

例えば、eMusicの場合、トークン価値が1つの楽曲で裏付けられていたり、取引所や流通市場でそれを簡単に売却することが可能。

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そのため、投資金が「ゼロ」になるということはありません。

言い換えると、本来ならICOは「0か1」というような投資ではないんです。

ICOを実施する前から既に多くの需要があるサービスを利用するためのユーティリティトークンの販売において、そのトークン価値が全てなくなるなんてことはありません。

ユーティリティトークンは、サービスを利用するためのトークンであるため、実際にサービスや製品がある企業のICOは、本質的にはセーフな投資。

もちろんトークン価格は上下しますが、ゼロになることはないでしょう。

しかし、製品もないような新興企業が行っているICOは、従来のスタートアップへの投資と同じこと。

大きなリスクがありますね。

この辺が、eMusicのICOと、他のスタートアップが行っているICOとの大きな違いと言えるかもしれません。

eMusicのように既に成り立っているビジネスが行うICOでは、トークンをすぐにプラットフォームで使うことができるんです。

トークン価値が全くなくなることはありません。

この点では、しっかりとしたユーティリティトークンを販売するICOにおいて、投資家へのリスクは少ないと言えるでしょう。

 

ー現在のICO市場で投機が多いことについてどのように思われますか? 

投機は確かに問題かもしれませんね。

eMusicがトークン価値を楽曲に裏付けしているように、ユーティリティトークンには何からの価値がなければなりません。

もちろんeMusicのトークンには、今後も続々と新機能が搭載されるため、「投機的な面」もあると言えますが、大幅な価格割れは抑えることができます。

正直なところ、投機はあまり好きではないですね。

現在のICO市場は、「将来への過度な期待」が多すぎるかなと思います。

マーケットがクラッシュした際に、自分の手元に何も残っていないように感じるのは、そのためでしょう。

しかし、多くのICOには初めから何もありませんから、しょうがないです。

この点では、何かで価値が裏打ちされたような有価証券をトークン化するセキュリティークンによる資金調達の方がいいかもしれません。

 

ーなぜセキュリティトークンの販売ではなく、ICOを選んだのですか? 

eMusicが「STO(セキュリティ・トークン・オファリング)」ではなく、ICOを実施した理由はとてもシンプル。

既に需要のある製品を持っているからです。

また、トークンを扱うような現在の仮想通貨取引所のほとんどはが証券取引を行うためのライセンスを持っていないことは事実。

そのため、サービスがないような新興企業がSTOを行うのはいいかもしれませんが、既に確立しているビジネスは、すぐにでも取引が開始できるユーティリティトークンの方がいいと思います。

ちなみに、ICOでよく販売する「サービスがトークン化されたユーティリティトークン」は、セキュリティートークンのように、誰かが購入できないといったような制限がありません。

一方、セキュリティトークンを購入するためには、制限がかかる場合が多く、例えば米国では「適格投資家」でないといけませんよね。

また、セキュリティトークンに反対しているわけではないですが、単純により多くの人が参加できるように初めからプラットフォームを構築したかった、というプロジェクトのビジョンもあります。

音楽を楽しみたい世界中の人々がeMusicのサービスを利用できるようにしたいです。

 

ー音楽業界の問題がありなぜそのような問題が改善されていないのですか。 

「改善されていない」のではありません。

日々悪化しています。

それというのも、アーティストは以前よりも少ない報酬しか得られないようなインフラが出来上がっているから。

音楽業界は、根本的に壊れていると言えます。

実は、ミュージックサービスもビジネスとして成り立っていなく、大きな損失を出しているんです。

直近でも、Spotify(スポティファイ)は50万ドル(約5700万円)失っています。

同様に、iHeart Radio(アイハート・ラジオ)も破産しましたが、以前の評価されていた額のおよそ半額でSerious XM(シリアス・エックスエム)によって買収されました。

現在のところ、ミュージックサービスで収益を上げているところはほとんどありません。

ミュージックサービスは収益の40%を得ていますが、後の残りお金はどこへ流れているのでしょうか。

ここが、ブロックチェーン技術がとても優れているところ。

ブロックチェーンが提供する透明性は、アーティスト、コンテンツクリエーター、またコンテントオーナへの支払いに関する透明性がグッと高まります。

お金がどこへ流れているかは、一目瞭然です。

これは、既存インフラでは不可能なのです。

 

ー従来の音楽業界のインフラでは、一体どのようなことが起きているのですか? 

仲介者へ多くの手数料が取られているという大きな課題があります。

当業界における仲介者というのは、例えば、レコードレーベルやパブリッシャー。

アーティストがお金を稼げていない理由は沢山のありますが、その一つとしてはこれらの仲介者がミュージックサービスプロバイダーから手数料として多額のお金を取っているから。

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ミュージックサービスのビジネスモデルのほとんどは「レベニューシェア」であり、例えばSpotifyの場合、収益の70%以上をいわゆる仲介者たちへ支払っています。

(*レベニューシェアとは、利益を一定の配分率で分け合うこと)

ミュージックサービスは、これのために収益のほとんどを支払っている状態になっています。

しかも、アーティストに至っては、レベニューシェアの比率を元に報酬が支払われるわけではなく、「実際に音楽が再生された回数」で報酬額が決定します。

これの意味合いとしては、毎回音楽が再生される度に、アーティストは1セントよりも少ないお金しか稼げないということ。

つまり、音楽が500回再生されても、1-10ドルくらいしか稼げません。

これはとても不公平ですよね。

 

ーeMusicはどのようにこの問題を改善しようとしているのですか? 

ますeMusicは、アーティストとミュージックプロバイダーの間で、収益を公平に分配する50-50のモデルを作ろうとしています。

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全てがオンライン上で行われ、デジタル化されているため、いくつかの利点があります。

まず、ブロックチェーンを使用することで透明性が高いことが挙がられます。

誰もがお金の流れを確認することができます。

例えば、ユーザーが1ドル支払った際に、それが実際にアーティストのもとへ流れているかなどを自身の目で確認できます。

次に、仲介者なしで直接アーティストへ支払いができること。

これにより、アーティストが支払いを受ける方法を大きく改善でき、現在稼いでいる額よりもおよそ5倍以上多くの報酬が受け取れることになるでしょう。

また、eMusicは、Spotifyを始めとする100企業以上の主要ミュージックサービスとパートナー提携しているので、アーティストは多くのオーディエンスへ向けて曲を配信することが可能です。

 

ー具体的には、どのようなことができるのですか? 

これから様々なサービスが加わりますが、「印税」に関する処理が一番わかりやすい例かもしれません。

例えば、あなたがアーティストなら、コンテンツをプラットフォーム上にアップロードし、自動的に最初のスマートコントラクトを作ることができます。

これには、すべての曲における印税に関する情報も組み込まれます。

その後、誰かがその曲を聞いた場合、その情報が集められ、自動的にアーテイストへ報酬が支払われます。

また、アーティストはもちろんですが、ミュージックサービスにとってもeMusicはとてもいいプラットフォーム。

従来は収益の70%以上を仲介者へ支払っていましたが、それが50%で済みます。

 

ーeMusicのトークン「eMU」には、曲を購入する以外に機能がありますか? 

EMUトークンは、ICO後すぐに音楽を購入するために使えますが、その用途は他にもたくさんあります。

一番大きな利点としては、アーティストがトークンを使って資金調達を実施できること。

現在eMUトークンを使用するクラウドファンディングプラットフォームを開発中です。

これにより、アーティストはレーベルからではなく、ファンから簡単に資金調達できます。

例えば、次のアルバム製作のために資金が必要な場合、曲の権利をトークン化して販売し、分け合えることが可能です。

これは、ブロックチェーン技術だからできること。

アーティストの活動に、誰でも参加できるようになります。

同様に、アーティストはファンから直接サポートを得ることができ、例えばUKバンドの「コールドプレイ」がユニバーサルから資金を得るのではなく、ファンから資金調達するなんてことが可能。

eMusicトークンは、業界全体で使われることを目標としており、既にそれがリリースされると同時に採用するとパートナー企業もいくつかあります。

 

ー最後に何か一言ありますか? 

音楽業界は、ブロックチェーンを基盤としたアーティストにとって平等になるような方向へ進んでいます。

Spotifyやアップル社も似たような取り組みをしており、遅かれ早かれこれは実現することでしょう。

しかし、これらの企業は、自社で独占的に使用するようなブロックチェーンを構築している一方、eMusicは音楽業界全体が使用できるようなインフラを構築しています。

eMusicが開発しているのは、誰もが利用できるオープンブロックチェーン。

アーティストが金銭的にピンチな状態が続くような状態は継続できません。

そのため、将来的にはブロックチェーン技術が全面的に採用されると思います。

これが、私の考える音楽業界の近未来。

将来的には、アーティストがファンに支持されながらミュージックを生み出すことできるようになるでしょう。

 
 
以上、eMusicのインタビューでした!